オーソドックスに、竹耳かきです♪(右耳)
;ボイス位置:1 普通に会話
【瀬奈】
「それでは、まずは右耳から。頭の左側をわたしのおひざに」
;ボイス位置:3 普通に会話
【瀬奈】
「……ああ、よく見えますよ。素晴らしい耳垢たちが……。じゅるっ」
【瀬奈】
「あ、すみません。垂れてはおりませんので! はあ、でも、こんんな、やっぱり改めて見ると……はぁんっ」
【瀬奈】
「ごくっ。はーはー、動悸と唾液の分泌が止まりません。わたし、わたしはっ……」
【瀬奈】
「はぐっ! おひふふんへふ、わらひ(落ち着くんです、わたし)! むぐ……ふーっ……ふーっ……ぷはぁ……」
【瀬奈】
「ああ、ご心配なさらないでください。冷静になるために、ちょっと自分の腕を噛んだだけですので」
【瀬奈】
「よし。理性も取り戻したところで、早速この耳かきをお披露目です」
【瀬奈】
「じゃじゃん。竹耳かき~。わ~っ♪」
【瀬奈】
「あれ……? あの、ここは拍手でお出迎え頂きたいところだったのですが……」
【瀬奈】
「なるほど……。ある程度ASMRに知識のある方か、生粋のミミカキスト以外の方は竹耳かきと聞いても、ああ、よくあるやつね、としか思わない。そういうことですか」
【瀬奈】
「いいですか。この竹耳かきはですね。いわば『定番の味』『母なる海』『実家』『安心毛布』などと言われていて……えとえと、それからそれから……」
【瀬奈】
「こほん。とにかく万人の還る場所であり、抜群の安定性を誇る至高の耳かき、なのです」
【瀬奈】
「論より証拠。まずはこの感触を感じて頂ければきっと解ると思います」
;SE:30秒ほど耳かき音
【瀬奈】
「いかがですか? そうです。この『帰って来た』感。これこそが竹耳かきの素晴らしさであり、最高の武器なのです」
【瀬奈】
「様々な耳かきを試した結果、最終的に竹に帰って来るかたは数しれず……」
【瀬奈】
「大の大人であっても、耳かきをされている間は子供に戻ってしまう。そう思わせる力がもっともあるのが、この竹耳かきなのです」
【瀬奈】
「確かに、高品質、かつ高機能な耳かきは巷(ちまた)にあふれています。しかし竹耳かきは変わらず、いつもそこにある」
【瀬奈】
「定番。いつもの。でもそれが最強。そんなシンプルな法則を、我々人類に思い出させてくれるのが、この竹耳かきなのです」
【瀬奈】
「ちなみに、こちらの竹耳かきは囲炉裏の煙でスモークされた特別製。竹の感触の良さを極限にまで高める加工がなされています」
【瀬奈】
「いかがでしょうか。なんて、わたしの話などおそらく半分以下ほどしか、聞こえていないでしょうね」
;SE:30秒ほど耳かき音
【瀬奈】
「頭がとろんとろ~ん、まぶたもすとんと落ちてきそうになるぐらい、心地よいでしょう?」
【瀬奈】
「これが、わたしの耳かきです。その体に教え込んで差し上げますね?」
;SE:30秒ほど耳かき音
【瀬奈】
「実は、耳かき自体、不必要な行為だ、という話はご存知ですか?」
【瀬奈】
「人間の体はよくできているもので、耳垢自体は放っておいても、勝手に耳の外にゆっくり出ていくそうなんです」
【瀬奈】
「特別な場合、たとえば耳が聞こえづらくなったり、かゆみが酷くなるほど耳垢がたまらないかぎり、耳かきをする必要などございません」
【瀬奈】
「しかし、なぜそれでも人は耳かきを求めるのか。少し、考えてみてください」
;SE:30秒ほど耳かき音
【瀬奈】
「答えは出ましたか? はい。今あなたの心の中にあるその答えも、真実です。その上で、わたしなりに出した答えを聞いてください」
【瀬奈】
「それは、『無駄だから』でしょう」
【瀬奈】
「ふふっ。驚きましたか? 生粋の耳かき好きのわたしから、こんな答えが出るなんて想像出来なかったのではないでしょうか」
【瀬奈】
「でも、よく考えてみて下さい。世の中には、大切、かつ必要なものがたくさんあります。例えば、愛。お金、安全な住居、衣服、食事……」
【瀬奈】
「それらを確保し、自らに保証し続けることが、わたし達人間のすべきことであり、義務なのだと思います」
【瀬奈】
「ですが、それだけでは疲れてしまいませんか?」
【瀬奈】
「あなたにもありませんか? すべきこと、必要なことばかりに向き合いすぎて、疲れてしまったことが」
【瀬奈】
「きっとあるはずです。そんな時と場合のために天上からわたしたちに与えられたのが、無駄で、無意味で、でも気持ちがいい、そう。……耳かきです」
【瀬奈】
「長々と語ってしまいましたが、ふふっ。こんな無駄話をしている間に、たくさんの耳垢をとることが出来ました♪」
【瀬奈】
「何かお話していないと、興奮で手元が狂ってしまいそうでしたので、わたしの声が邪魔でしたら、申し訳ありませんでした。けれど……」
【瀬奈】
「少なくとも、お嫌ではなかったようですね。それでは、次は左側を耳かきさせて頂きますね?」