『坊ちゃん、朝食にしようか』
;SE:食堂のフレンチドアを開ける音
;ボイス位置:1 普通の会話
【結希】
「朝だー、あーさーだーよー。ごはんの時間だよー」
;SE:椅子を引く音
;SE:椅子に座る音
【結希】
「さあ、坊ちゃん。朝食にしようか」
【結希】
「今日の朝食のテーマは、アメリカの一般家庭の朝」
【結希】
「ホットコーヒーを飲みながら、新聞でも広げて優雅に朝を過ごそうじゃないか」
【結希】
「ラジオやテレビを流したりはしないが、代わりにぼくが小粋なトークで繋ぐとしよう」
【結希】
「トーストも今から焼くからね」
;SE:ポップアップトースターのレバーを下げる音
;SE:トースターの駆動音(以下暫く)
【結希】
「いつもはシェフがオーブンで焼いてるけど、たまにはこういう飛び出すトースターも良いだろう?」
【結希】
「火傷しそうなくらい熱々のパンに……カリカリのベーコンと新鮮でシャキシャキのレタスを挟んで、思いっきりかぶりつくんだ」
【結希】
「おぉう……自分で言っていて、早く食べたくなってしまったよ……」
;SE:トースターが焼けた音
【結希】
「おお! なんてナイスなタイミングなんだ! 素晴らしい!!」
【結希】
「パンもぼく達に食べられたがっているのかもしれないね。はははっ」
【結希】
「おわっちっち……ふーふー。やっぱり焼きたては熱いね」
【結希】
「でも坊ちゃんの為なら、たとえ火の中水の中! 温かい内に美味しいサンドイッチにしてあげるからね! まかせたまえ!」
;SE:具材を載せてパンを折っていく音
【結希】
「よし! 完成だ! じゃあ、あーんと君の美しいお口を開けてごらん?」
;SE:サンドイッチに食らいつく音
【結希】
「ふふっ。どうかな?」
【結希】
「まずは、レタスの少し苦味をおびた爽やかさが駆け抜けていって……パン本来のほのかな甘みと、ベーコンの肉汁が後からやってくる。そして彼らはレタスに追いつき混ざり合う。口の中で、待ち合わせをしていたかのようにね」
【結希】
「するとどうだろうか。彼らがマリアージュになって、口の中でハーモニーを奏でるだろう?」
;SE:サンドイッチに食らいつく音
【結希】
「しゃく、しゃく、しゃく……」
;SE:サンドイッチに食らいつく音
【結希】
「小気味いい音も合わさって、口の中はオーケストラ、そして満員御礼だ」
【結希】
「喉に詰まらせるのは良くないからね、ゆっくり、よく噛んで味わってくれよ」
【結希】
「さて。ぼくはきみの食後のコーヒーを準備するとしよう」
;SE:コーヒーカップを置く音
;SE:ドリッパーにペーパーフィルターをセットする音
;SE:コーヒーの粉を入れる音
【結希】
「ふふ。本来は裏のキッチンで用意するものだが、たまには目の前で用意するのもオツなものだろう?」
【結希】
「今日のテーマはアメリカの一般家庭の朝だしね」
【結希】
「一応、少し離れていてね。お湯が跳ねて火傷してしまうといけないから」
;SE:お湯をゆっくり入れる音 少量
【結希】
「まずはゆっくり、コーヒーの粉にちょっとずつお湯を含ませるんだ」
【結希】
「こうする事で……ほら、いい香りがしてくるだろう?」
【結希】
「蒸らせば蒸らすほど、味が濃密になっていくんだ」
【結希】
「坊ちゃんの好みに合わせるなら……蒸らす加減はこのくらいかな?」
【結希】
「お湯をまた優しく注ぎ込んで……」
;SE:お湯を優しく注ぐ音
【結希】
「サーバーに落ちていくコーヒーをゆったり眺めるんだ」
【結希】
「このドリッパーだと全部抽出するのに時間がかかるからね」
【結希】
「まるで砂時計のようだろう? まあ今日のぼくらは時間に追われているわけではないけどさ」
【結希】
「よし。出来上がりだね」
;SE:コーヒーを注ぐ音
【結希】
「淹れたてのコーヒーだ。召し上がれ」
【結希】
「今日の新聞もいるかい? 今日もまた世界は大騒ぎさ」
【結希】
「まあ何はともあれ、ぼくたちはゆっくりと過ごすとしよう。普段はせわしない日常を送っているわけだしね」
【結希】
「この後はどうしようか? お出かけしてもいいし、宿題を片付けてもいいし、ぼくがひたすら坊ちゃんのお世話をするのも悪くない」
【結希】
「まあ、坊ちゃんが何をするとしても……お供いたしますよ」