トラック8:ドジっ娘マジシャンの原点
;◆このトラックから徐々に安眠誘導を強める意識です
;◆メリハリ強弱等、声を張らずゆったりと演技していただけますと幸いです。
;◆SE:1 頭を撫でる音(継続)
【マジシャン店員】
「(少し長めの息遣い:頭を撫でる)」
;◆SE:5 リスナー身じろぐ
;◆SE:1 マジシャン店員 衣擦れ(リスナーが身じろぐので)
【マジシャン店員】
「……いい感じに……ゆったりしてきましたかね……?
じゃあ……そろそろマジシャンになった経緯……お話しますか……」
【マジシャン店員】
「……といっても、そんな大それたものじゃなくて……
……私のおばあちゃんが、単にマジシャンだったからなんですけどね……」
【マジシャン店員】
「もう、とっくに引退済みですけど……マジック界ではかなり名の知れた人でして……」
【マジシャン店員】
「マジックショップって……マジシャンなら必ずお世話になるお店があるんですけど……
そこにはマジックのネタが書かれた……レクチャノートという本が売ってまして……
そのほとんどは……おばあちゃんが作ったもの……なんですよね……」
【マジシャン店員】
「そんなすごいおばあちゃんですけど……いつも会えば……
こうして頭を撫でてくれる普通のおばあちゃんでした……」
【マジシャン店員】
「……まあ、頭を撫でていたかと思えば……
いきなりステッキを出してきたりするたので……
そう言う点では……うーん、やっぱり変わった人ですかね……」
【マジシャン店員】
「けど、大人だろうと子供だろうと、全力で笑顔を届けてくれるー……
パワフルで……チャーミングな……エンターテイナーでした……」
【マジシャン店員】
「そんな姿を見て……私もこんな人になりたいなって思ったのが……
私がマジシャンを志した……きっかけですね……」
【マジシャン店員】
「(少し長めの息遣い:頭を撫でる)」
【マジシャン店員】
「……でも……マジシャンになりたいって話したら……
あはは……反対されちゃいました……」
【マジシャン店員】
「ほら、出会い頭で……私、派手に転んじゃったでしょ……?
私、普段はあんな感じで、よく道端で転びまして……
それに、お菓子の袋すら開けるのも満足にできない……ダメ人間なんですよ……」
;◆SE:5 リスナー身じろぐ
;◆SE:1 マジシャン店員 衣擦れ(リスナーが身じろぐので)
【マジシャン店員】
「……ん? 器用に見えましたか?
それは意識しているのと……練習のおかげですね……」
【マジシャン店員】
「それにオススメされなかったのは……
実はおばあちゃん……脱出マジックで大やけどを、
ナイフを使ったマジックで……一回、自分の手を刺しちゃったことがあって……」
【マジシャン店員】
「それもあったから……いくら練習しても怪我はする。
不器用で大事な孫娘には危ないかもしれないって……思ったんでしょうね……」
【マジシャン店員】
「……もちろん、その手のマジックを避けたものをすればいい話ですけど……
マジックの世界は……派手に見せてなんぼという面もありまして……」
【マジシャン店員】
「そう考えると、私、できるかなって……しばらくは悩みました……。
……そして、そんなことを考えていたある日ですね、ふとこのカフェに入ったんです……」
【マジシャン店員】
「接客してくれたのは……年上ですけど……どう見ても小学生みたいな女性でして……
その方に、お客サマみたいに……耳かきを受けまして……」
【マジシャン店員】
「これが、もうあまりに気持ち良すぎて……不思議な体験でした……。
でも……すぐにこれだ! と、思ったんです……」
【マジシャン店員】
「どんな形でも……お客サマに楽しんでもらえるものがある……。
なら、私は……私だけが出来るマジック作ればいい……。
もっと具体的に言うと、こういう耳かきとかとマジックって……組み合わせられないかなって……」
【マジシャン店員】
「……マジックの種類としては地味にはなっちゃいますけど……
この熱意をおばあちゃんにぶつけたら……あっさり認めてくれました……」
【マジシャン店員】
「そこから、私のマジシャン人生が……歩み出しました……。
そしてお礼を言いに……このカフェへ来たら……
せっかくだし、ここでショーをして……そのマジックを作らないかって誘われて……」
【マジシャン店員】
「まあ、今に至るわけです……」
【マジシャン店員】
「あはは……ね? 大した話じゃないでしょ? でも……ここで私だけのマジックを作り上げて……
いつかはマジック界のオリンピック……FISM(フィズム)で私のマジックを披露するんです……。
……まあ、夢はでっかくというやつですよ……」
【マジシャン店員】
「けど……不可能ではない……!
だって、今日も……私のマジックで感動してくれた人がいたんですもの……」
【マジシャン店員】
「(少し長めの息遣い:頭を撫でる)」
【マジシャン店員】
「……そう、お客サマです! お客サマのおかげで……私、また自信が付きました……!」
【マジシャン店員】
「だから、もしよければ……また私に……自信を付けさせに、遊びに来てくれませんか?
もちろんコーヒーだけ飲みに来たいって思っても……全然いいですから……」
【マジシャン店員】
「来てくれたその時は……私の持ちうる力で……
あなたに笑顔と安らぎを届けますからね、うふふ」