第17話 実験23日目(日)
日曜日 PM11時ネル子の部屋 机の上で悩むネル子
ネル子 「……はぁ……あと一時間でまた、月曜日がやってきてしまいます……前は部長と会えないこの
週末がとても煩わしかったのに、今は逆に落ち着いてしまいます……あと7日、来週の日曜日には部長は薬の効き目が切れて元に戻るはずです……でも、もし元に戻らなかったら……」
ペラペラと手帳をめくるネル子
ネル子 「……ふふ、ずっと積極的な部長ですか……いつか部長とラブラブになったらしたいなと思ってい
た妄想を書いたこの手帳、全部叶ってしまうんでしょうね……当たり前にデートに誘ってくれて、当たり前にキスしてくれて、当たり前にえっちしてくれる……普通のことなのにどうしてこんなに悲しいんでしょう……こんなのカラッポです……こんなのもう私は……」
ドア開く
クゥ子 「ネル姉……」
ネル子 「クゥ子……」
心配かけまいといつものトーンで話す
ネル子 「どうしたんですか?また、宿題でも見て欲しいんですか?もう、いつもこの時間なんですから…
…今日は数学ですか、化学です……」
クゥ子 「ネル姉……一緒に寝よ?」
しばらくの間
布団に入った二人
ネル子 「どうして急に一緒に寝ようなんて言い出したんですか?」
クゥ子 「……ネル姉が悩んでたから」
ネル子 「そ、そんなことないで……」
クゥ子 「わかるよ私!料理の味付けちょっと濃くなったし、お風呂も長くなった、それにあんまり笑わなくなった」
ネル子 「クゥ子……」
クゥ子 「ネル姉の悩みだってわかってる……彼氏さんでしょ?……私のあげたラムネのせい……ただのお菓子だと思ったのにごめん……ごめんね、ネル姉」
ネル子 「クゥ子のせいじゃないですよ。部長に飲ませたのは、私の意思です……だから私が受け止める責
任があるんです」
クゥ子 「違う、私があんなもの冗談半分で上げたから!」
ネル子 「クゥ子……違うんです」
ネル子 「私がバカでした……あんなものに頼らないでありのままの部長を受け入れていれば」
クゥ子 「ネル姉……」
クゥ子 「……私ね、最初はネル姉と彼氏さんのこと受け入れられなかった。ネル姉に彼氏出来たなんてショックだし、しかもあんなフツーで大した取り柄もない男だし」
ネル子 「フツーですか」
クゥ子 「ううん、フツーじゃなかった。あの人は天才だよ。ネル姉を笑顔にする天才。彼氏さんと付き合ってからネル姉はいつもニコニコしてた。イチャつくわけでもないのにさ……ううん、むしろイチャつけない時の方がネル姉嬉しそうだった」
ネル子 「……よく見てますね……まるでずっと観察していたようです」
クゥ子 「そ、そんなことないよ!でね、わかっちゃたんだ。多分、運命の人ってこういうモノなんだなって、ピッタリはまるっていうか、お互いがすごくいい感じに距離が取れてる……ネル姉が近づきすぎたら彼氏さんが離れて、ネル姉が離れすぎたら彼氏さんがそっと近づいてあげる……たぶん彼氏さんは気づいてないけど、だから天才」
ネル子 「クゥ子……」
考えるネル子
ネル子 「距離ですか……」
クゥ子 「どうしたの?ネル姉?」
ネル子 「クゥ子は私の敬語ってどう思います?」
クゥ子 「どうって……普通だけど。うーん、ただスゥ姉に聞いた事があるんだ……ネル姉小さい時は敬語じゃなかったって」
ネル子 「そう……なんですか?」
クゥ子 「私が物心ついたころにネル姉敬語になったんだって、私がパパとママに甘え出したころ」
ネル子 「はぁ」
クゥ子 「んでね、ネル姉はそれまでは甘えん坊で恥ずかしがり屋だったんだってさ」
ネル子 「ぜ、全然記憶にないです」
クゥ子 「……お姉ちゃんになって、私にパパとママに甘えるのを譲ってくれたんだよ……敬語はさ、その遠慮っていうか、決意?の現れじゃないかな」
ネル子 「むーっ、小さい時の話ってむず痒いものです」
クゥ子 「さっきの話だけどさ、部長さんとネル姉はそういう意味でもピッタリだよね…
…なんていうかアレだ、ネル姉が甘える理由をちゃんと毎回与えてくれてる。だからネル姉は遠慮なく甘えられるし……必ずネル姉から甘えるから恥ずかしくもならない……ちょっと悔しいぐらいハマってるね」
ネル子 「あ……なるほど……私、ずっと部長に支えてもらっていたんですね……お姉ちゃんの言葉の意味
がやっとわかりました」
クゥ子 「スゥ姉がどうかしたの?」
ネル子 「久々にお説教されちゃいました」
クゥ子 「ええっ、ネル姉が?」
ネル子 「あー見えて、時々しっかりしてるから侮れないんですよ」
クゥ子 「ふーん、スゥ姉がねー、ネル姉の方がよっぽどお姉ちゃんだよ」
ネル子 「ふふ、いつかクゥ子にもわかりますよ」
クゥ子 「……大丈夫だよネル姉!部長さん、絶対元に戻るから!もし戻らなかったら、今度は全国のダンキからショウキョクテキニナールを探してきてあげる」
ネル子 「……はい♪もしそうなったらお願いしますね」
クゥ子 「そうそう、その顔。ネル姉は笑ってた方がかわいいよ……あ、そうだ!どうせなら残りの5日間楽しんじゃうってのはどう?」
ネル子 「楽しむ……ですか?」
クゥ子 「そうそう、つまりネル姉は積極的になった部長さんをどうしていいかわからないんだよね?」
ネル子 「……まぁ、そうです」
クゥ子 「ならさ、いっその事受け入れちゃえばいいんだよ……強制的に」
ネル子 「強制……的にですか」
クゥ子 「そお、受け入れるしかない立場になるの。例えばー」
クゥ子 「(ごにょごにょ)とか♪確か、前にプレゼントしたよね?」
ネル子 「なるほどーアレですか、確かにアレは今しか出来ないプレ……いえ、今の私のモヤモヤした気持
ちを解決するにはピッタリの立場ですね……中々の無茶理論ですが、いけそうな気がしてきました」
クゥ子 「……よかった。ネル姉元気になって……少しはおかえしできたかな?」
ネル子 「おかえし……ですか?」
クゥ子 「小っちゃい時の。私が落ち込んでたり、寂しがってたらこうして一緒に寝てくれたよね……だからね、そのおかえし」
ネル子 「……そんなこと姉として当然ですよ」
クゥ子 「なら、私も妹として当然。ニシシ」
ネル子 「ふふっ、そうですか……ではお言葉に甘えて」
寄り添うネル子
クゥ子 「ネ、ネル姉!?」
ネル子 「今日だけはクゥ子に甘えちゃいますね……寄り添って寝ましょうか……クゥ子、ありがとうござ
います」
クゥ子 「う、うん!ネル姉、おやすみ……ぐへへ、ネル姉柔らかい……」
ネル子 「何か言いました?」
クゥ子 「ううん、なんでもないよ♪」