ふふっ、ついでに耳かきでも如何ですか?」(耳かき)
「あ、先生、おはようございます♪ ふふっ、そんな驚いたお顔をして♪」
「えーっと、どうしてソファーの上で、しかも私の膝枕で目を覚ましたのか、ですよね?」
「ちょっと目の使いすぎで目が苦しいのでおめめポカポカシートで温めるー、10分だけ休憩ーと、横になって、ですね? そこからは説明不要かと」
「ふふっ、折角うたた寝するのでしたら枕があったほうがと思って、膝枕をしてあげちゃいました」
「それに先生、膝枕をされるの、お好きそうですし」
「膝枕をされるのが嫌いな人間はいない? ふふっ、確かにそうかもしれませんね。ユウカちゃんも膝枕をしてあげるととても気持ち良さそうに眠ってくれますし」
「それに先生、こうして膝枕されている動画や音声?もご覧になっているの、ちゃんと知ってますので♪」
「そしてー……ふふっ、先生? 膝枕をされながら耳かき、というのもお好きなんですよね?」
「折角膝枕をしてますし……ついでにまた休憩、しましょうか? それとも大人な先生は休憩の誘惑に負けずお仕事、しちゃいます?」
「ふふっ、やはり休憩は大事、ですからね。膝枕と耳かきの誘惑に負けたわけではありませんよね♪」
「あ、耳かき棒でしたらご心配なく。念のため膝枕をする前に持ってきてありますのでご安心を♪」
「では、どうぞ? どちらのお耳からでも構いませんのでごろんとして下さい♪」
「はい、ごろーん♪」
「先生はこちらのお耳からがお好み、と♪ ふふっ、特に他意はありませんよ♪」
「では、髪の毛を失礼して……先生の髪の毛、見て目通りサラサラしてて素敵ですね。ユウカちゃんの髪の毛より柔らかくて優しい触り心地です」
「私の髪もサラサラで素敵、ですか? ふふっ、有り難う御座います♪ お手入れはしっかりしているので褒めて頂けると嬉しいですね」
「褒めて頂けたので念入りに耳かき、頑張っちゃいましょうか」
「それでは……痛かったら言って下さいね、先生」
「……如何……でしょうか? 先ずは優しく、ですが、違和感等は……無ければ問題ありません。耳かき、続けますね」
「……はい? 耳かきを始めたところで申し訳ないけど、この状態を見られたり聴かれたりしていたらマズい、ですか?」
「ふふっ、ですねー♪ 耳かきをされながら見つかったときの言い訳を考えておくのが良いかもしれません。私も一緒に考えてあげます」
「なんて、冗談ですよ、先生。恐らく、ですが盗聴や盗撮の心配はいらないと思います。不意の訪問であればここに来る前に分かりますし」
「セミナー書記として、情報漏洩は歓迎しない場面が多いので、その対策として周囲の電波をジャミングする装置を携帯していますので♪」
「ふふっ、あくまで違法そうな電波に対して効果を発揮する装置ですので、WIFIや無線には影響がありませんのでご安心を。流石ヴェリタスの副部長、とても頼りになります」
「その他の手段で監視されている場合……ですか? 古典的ですが望遠鏡での盗撮、でしたらご心配なく。窓に作業をしている風景を流してありますので♪」
「ふふっ、用意周到、ですか? 休むときは心配事をなくして休むのが一番ですからね。そのための準備は惜しまないというだけです」
「……もっと別な手段でシャーレに現れる子もいる、んですか? 突然現れたり観葉植物に擬態していたり、気付けばすぐ傍にいたり……? ふふっ、忍者や幽霊のような生徒さんもいらっしゃるんですね」
「では、次回からはそのような方々にも対策出来るよう準備をしておきましょうか。そう、ですね……エンジニア部やヴェリタスも悪くないかと思いますが、話を聴く限り特異現象捜査部の部長にお話を伺ってみるのも良さそうですね」
「と、少し奥の方まで耳かき棒を入れますので、痛かったら仰ってくださいね」
「とりあえず……ユウカちゃんはこれくらいまでなら大丈夫だったので……」
「ふふっ、大丈夫そうですね。では、続けます」
「耳かき、されるのも勿論ですがするほうも結構楽しかったりしますね。あまりノリノリになってしまうと危険なので、ちゃんと自制はしますが」
「まあ、私の場合、先生以外にしたことなんて片手の五分の一程度の人数ですけどね♪」
「ふふっ、先生はメイドさんもお好きでしたし、メイドさんに耳かきをされたら嬉しいのではありません?」
「次は私がメイド服を着て耳かきを? ふふっ、先生? 随分はっきりと寝言、しゃべられるんですね♪」
「私よりももっと相応しい方々がいらっしゃるじゃないですか♪ メイド服耳かき、C&Cにお願いしてみては如何でしょう」
「先生のお願いでしたら皆さん、渋々だったり悦んでだったり、受諾してくれるはずです」
「それに「お掃除」が専門ですし、お耳のお掃除もお手の物、ですよ、きっと。」
「ふふっ、面白がっているように見えます? 先生がそう仰るのでしたら面白がっているのかもしれませんね」
「面白がっているついでに質問なのですが、先生はC&Cの誰が一番上手に耳かき、してくれそうだと思います?」
「ふむ……ふむふむ……耳元で爆弾を爆破させられたり、耳かきどころじゃなくなったり、そもそも耳かきを存じ上げなかったり、何となくお願いしにくかったり、と……ふふっ、中々難しそうだというのは同意です」
「ですが……私はリーダーこそが一番上手に耳かきをしてくれるのでは、と思います。想像してみて下さい? リーダーに「耳かきをして」とお願いしますよね?」
「ふふっ、当然のようにちょっと怒られるでしょう。そこでもう1度、もう少し強めにお願いしてみましょうか」
「すると……ふふっ♪ 想像出来ました? 渋々ではありますが、きっとしてくれますよね♪」
「それに、ですね。ああ見えてとてもしっかりした方なので、きっと耳かきもきっと上手にしてくれるはずです。任務中の姿からは想像、出来ませんけど」
「ふふっ、先生? ちょっと本気にしちゃいました? 後学のために耳かきをお願いしたらどうなったか、後程教えて下さいね」
「はい、では仕上げにー」
「まあ、私の耳かきのオススメは……聴かなくても分かりますよね。ユウカちゃんの太ももでの膝枕、とても気持ち、良いんです♪ っと、念のためですが今のはユウカちゃんにはナイショ、ですよ、先生」
「それにユウカちゃんとの作業通話のファイルをパソコンに保存している先生なら分かると思いますが、ユウカちゃんの声もとてもリラクゼーション効果がありますからね」
「ユウカちゃん、耳かきのときは無理に喋らずに黙って耳かきをしてくれても良いのに、私を気にかけて話しかけてくれるのもポイントが高いですね」
「勿論、耳かきも上手なので……ふふっ、いつぞやのお礼ということで、そのまま寝かされちゃったりしたりもしました」
「ふふっ、ユウカちゃんの耳かき、気になります? 私がユウカちゃんに「先生が耳かきをして欲しいと言ってましたよ」と伝えておきましょうか?」
「あら、ユウカちゃんがどんな反応をするか見たかったのに、ご自身で聴きたいだなんて。ふふっ、先生もユウカちゃんの反応、見て見たかったり、ですか?」
「では、私はこっそりユウカちゃんに聴いてみたりはしませんので、どんな反応だったか教えて下さいね♪」
「はい。こちらのお耳の耳かきはお終い、です。あまり長くしてしまうと耳を傷めてはいけませんので」
「はい。それでは、耳かきはここまでにしてお仕事の続きをー――」
「ふふっ、冗談です。では、逆のお耳を耳かきしますので、ごろんして下さい」
「はい、では次はこちらのお耳を……」
「こちらのお耳も痛かったら言って下さいね、先生」
「如何です? 基本、先ほどと同じように耳かきをしていますが問題は……無いようでしたら問題ありません。続けますね」
「……ふふっ、さっきからですが耳かきをしているとこう、何か喋りたくなってきてしまいますね。ユウカちゃんが耳かきをしながら話しかけてくる理由、分かる気がします」
「こういうときに何故喋りたくなるのかロジックを説明、して欲しくなりますね。気になるので今度聞いておきましょうか」
「と、そういえば話が変わってしまうのですが……先生、無理をするのはほどほどになさって下さいね。先生は私達と違い、銃弾一発が致命傷になるんですから」
「最前線に出ることは殆どないかと思いますが、流れ弾や跳弾もあるでしょうし、爆発物の破片が飛んできたりというのもあるかもしれません」
「ですので、もう少しご自身の安全に対する注意を……といっても、先生は生徒の頼みとあれば自分のことはそっちのけで頑張ってしまうのでしょうけれど」
「もしものことがあったら悲しむ生徒はたくさんいます。ユウカちゃんもとても悲しむと思いますし……勿論私も悲しみます」
「ですので、私が簡単に言ってどうにかなるものでも無いのは重々承知していますが……それでも、尚一層ご注意頂ければ、です」
「……私に何か出来ることがあれば、その時は遠慮なく仰って下さい。ミレニアムの技術の粋を集めて先生のためにお手伝いさせて頂きます」
「エンジニア部にお願いすればミサイルでも防げる防弾チョッキも可能かと思いますし、身辺警護でしたらC&Cにお願いすれば――」
「ふふっ、遠慮なされるのは知っています。もし必要になったら、です。私に言い難かったら……ユウカちゃんに相談するのも良いかもです」
「そのときのユウカちゃんの反応、是非私に教えて下さいね、先生♪」
「こちらのお耳も少し奥まで失礼します」
「左右で多少感じが違いますが、違和感や痛みは――ふふっ、大丈夫そうですね。では、続けます」
「……はい? 先生、どうしました? 耳かきの具合が良くない――わけではなく……突然だけどクイズ……ですか?」
「構いませんが……どうぞ? ふむ……ふむふむ、私がお手伝いを初めて現時点まで、何回「ユウカちゃん」と言ったか、ですか?」
「ふふっ、30回、先ほどのを含めて31回です。当たってますよね♪ 先生はそうなんだってお顔、してますけど♪」
「これくらいの集中強度でしたら、私の記憶力が鈍ることはありません。余程忙殺されていれば或いは……と思いますが、経験はないですね」
「ふふっ、記憶力が凄くて羨ましい、ですか? 確かに、便利なことも多いですね。書記としてこれほどプラスになる能力もなかなかないと思います」
「キッチンに向かってから何をしようとしたのか忘れることもありませんし、夕飯の食材をうっかり買い忘れることもありません」
「記憶のどの場面を切り取っても鮮明で、おぼろげに、ということもありません。ふふっ、やっぱりちょっと羨ましいと思いました?」
「先にも言いましたが、便利ではあるんです。知識を記憶しておければ、それを引き出して応用することも可能です。客観的に、それが正しい知識であると判断したものに限りますが」
「私の記憶力とユウカちゃんの計算能力があればおおよその事象は解決……出来るかな、とも思います」
「ですが、良いことばかりではないのかもしれません。今のところ、そこまで致命的に不幸だと感じたことはありませんが……」
「なるべく考えないように、思い出さないようにすることは出来ますが、ネガティブな事象について、忘れられないというのは不便ではありますね」
「例えば、ですか? えーっと……先生と、ユウカちゃんをはじめ、多くの生徒さんが死地に赴いた際の記憶は……今思い返してもハラハラはするかもしれません」
「……ハッピーエンドが確約されている小説の中の悲劇、程度のものですが」
「というわけで、先生? 先程もお話しましたが……ご自身の身体、大事になさって下さいね」
「先生に何かあったら、それだけでも辛いですが……それに付帯してユウカちゃんが悲しむ姿も私は記憶しなければいけなくなりますので」
「ふふっ、ですので、可愛い生徒にそんな記憶を植え付けないためにも、十分に注意、して下さいね」
「戦闘に赴くときは勿論、生活全般について、です♪」
「はい、ではこちらも仕上げに」
「ふふっ、やっぱり耳かきをしているとあれこれとたくさんお話、してしまいますね」
「先生が聞き上手だから……ですか? ふふっ、そうですね。そういうことにしておいてあげます」
「そう、ですね。先生、こんなに耳かきをされて喜ぶのでしたら……エンジニア部にお願いして全自動耳かき器でも作って頂きましょうか?」
「そうすればおひとりで作業なさっているときも、休憩に耳かきをして貰えますし。あっ、そうですね、アバンギャルド君を改造して耳かき機能を搭載――」
「あら、全自動耳かき器はいりません? やっぱり人間のぬくもりが感じられるのが一番、ですか? でしたら、アバンギャルド君に人肌程度に発熱する機能を――」
「ふふっ、冗談です。やっぱり人にして貰うのが一番、ですからね。私はユウカちゃん以外にされたこと、ありませんけど♪」
「はい。お話をしている間にこちらのお耳の耳かきもお終い、です。先生のお願いでも延長はしてあげませんので♪」
「では、耳かきはここまでにして残りのお仕事をー――」
「……ちゃんと起きるから、あと10を数える間だけこのままで、ですか? 何事も余韻は大事……。確かに一理ありますね」
「では……10数えたらちゃんとお仕事、しますよ、先生」
「10」
「9」
「8」
「7」
「6」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「0」