朝露桔梗の相談
05. 朝露桔梗の相談
○サロン内、ベッド上
<状況>
綿棒でのお掃除を終えた後。
不意に桔梗が起き上がり、星蘭と向き合う。
(星蘭)
……おお?
急に起き上がって、どうかしたかい?
(桔梗)
うん、最初に言った相談、したくて。
(星蘭)
ふふっ、そっか☆
ボクで良ければ、話してごらん☆
(桔梗)
えっとね、先輩に、お礼がしたいなって。
(星蘭)
ふーむ、月乃ちゃんにお礼かー。
ふふっ、いつも優しくして貰ってるお礼かい?
(桔梗)
え、よく分かったね。読心術?
(星蘭)
そりゃ、心を読むまでもなく、見てれば分かるさー☆
月乃ちゃんはキミをすっごく、
気にかけてるみたいだからね☆
▽大人びた笑みを浮かべて小声で。
……ふふっ、月乃ちゃん。
ずっと一人を選んできたキミにも、
大切にしたい子が見つかったんだね。
▽いつもの調子に戻る。
こ、こほんっ!
そ、そりゃ月乃ちゃんには相談できないわけだー☆
(桔梗)
うん、何が良いかな?
(星蘭)
んー、桔梗ちゃんが選んだものなら、
何でも喜びそうだけど……。
月乃ちゃんってさ、
あまり物欲ないんだよねー。
サロンで貰った学内通貨も、
下着と備品にしか使ってないらしいし。
……あ、そうだ。
桔梗ちゃんって、
夏休みは寄宿舎に留まるのかい?
(桔梗)
……うん、そのつもり。
(星蘭)
▽表情が曇ったのを見て、桔梗の家庭事情を察する。
……あ。
こほんこほんっ!
この学園って長期休暇中でも、
半分くらいの子は家に戻らないからさー☆
全然気にしないで良いんだよ☆
(桔梗)
……そっか。先輩も残るのかな。
(星蘭)
うん、月乃ちゃんは、去年も残ってたみたいだねー。
授業もないし、サロンもお休みにするから、
二人でいっぱい思い出を作ると良いさ☆
(桔梗)
すること、あるかな?
(星蘭)
ふっふっふー☆
そんな桔梗ちゃんに……夏限定で出現する、
とっておきの場所を教えてあげよう☆
(桔梗)
え、場所?
(星蘭)
そうそう☆
みんなが知らない、秘密の場所さ☆
▽わざとらしく語るように。
……あれは去年の、夏休み最終日。
ボクが学園に戻ってきた時のことだった。
(桔梗)
えっと、何をやらかしたの?
(星蘭)
ちょ、初めからやらかしたって、
決めつけないで欲しいなー!?
こ、こほんっ。
学園に着いた頃には、すっかり日も落ちててね。
自分の部屋に戻って、消灯時間も過ぎて、ふと気づいたんだ。
『ボクの夏休みこれで終わり!?』ってね!
だから脱走した☆
(桔梗)
……やっぱり。
(星蘭)
まぁまぁ!
忙しくて全然遊べてなかったし、
ちょっとは大目に見て欲しいな!
それに……考えてみなよ、桔梗ちゃん。
夏の終わり、夜の学校。
何だかワクワクしてこないかい?
(桔梗)
うん……する、かも?
(星蘭)
ふっふー、あの冒険感を味わえば、
桔梗ちゃんにもきっと分かるさ☆
……それでね。
裏庭の奥に、ビオトープがあるのは知ってるかい?
(桔梗)
うん、池みたいなところ?
(星蘭)
そうそう☆
学園で管理してるお池☆
8月の終わり頃が良いかな。
夜になったら、
月乃ちゃんと一緒に行ってみて☆
敷地内だから街灯はあるけど、
懐中電灯もサロンに用意しておくからさっ☆
(桔梗)
えっと、何があるの?
(星蘭)
ふっふっふ……。
それは行ってからのお楽しみってことで☆
きっと月乃ちゃんも喜ぶと思うよ☆
あ、でもー。
先生たちには見つからないよう、気をつけてね☆
……ボクみたいに、みっちり絞られちゃうから。
(桔梗)
やっぱり怒られたんだ……。
(星蘭)
ま、見つからなければ問題ないさ☆
んー、あとはー。
ちょっとしたプレゼントもあればバッチリかなー。
ねぇ桔梗ちゃん。
月乃ちゃんって聞いて、
思いつくモノを言ってみて貰えるかい?
(桔梗)
んー、やっぱり下着?
(星蘭)
ふふっ、なるほどー。
下着が最初に出てくる時点で、
桔梗ちゃんもすっかり、サロンに染まってるねー☆
▽少し唸りながら。
ただ……うーん、確かに良い案ではあるけど、
下着はもうたくさん持ってるのが難点かー。
ちなみに、他には何かあるかい?
(桔梗)
えっと、んー……あ、髪のリボン。
(星蘭)
お、良いじゃないか☆
髪留めのリボンは、
月乃ちゃんのトレードマークだからね!
……ふふっ、せっかくだから、
お揃いにしたらどうだい?
(桔梗)
ん、わたしも着けるってこと?
(星蘭)
そうそう☆
桔梗ちゃんにも、きっと似合うと思うなー☆
▽ベッド横のテーブルからカタログを取る。
ちょっと待っててねー。
今日はちょうど、通販のカタログ持ってきたから☆
んっ、しょっと。
さてさてー、髪留めのページは……っと。
お、この辺かな☆
▽カタログを差し出して。
ほら、桔梗ちゃん☆
好きなのを選んでね☆
(桔梗)
うん、ありがとう。
(星蘭)
ふふっ、どういたしまして☆
もし時間が必要なら、
そのカタログは貸してあげるよー☆
(桔梗)
ん、これが良い。
(星蘭)
って、はやっ!?
もう決めたのかい!?
(桔梗)
うん、お花の柄で可愛いかったから。
(星蘭)
ふむ、どれどれ……。
おっ、確かに可愛いね☆
……なるほど、
色々なお花の柄があるみたいだね。
この薄紫色は、ラベンダーかな?
(桔梗)
うん、似合うと思って。
(星蘭)
ふふっ、桔梗ちゃんも分かってるねー☆
じゃあ月乃ちゃんのは決まりとして、
自分のは見つけられたかい?
(桔梗)
んーと……あ、わたしと同じ名前のお花。
(星蘭)
お、良いんじゃないかい?
深い青色で素敵じゃないか☆
▽優しい声色で。
……ふふっ。
キミの名前は、きっと、
このお花が由来になってるんだろうね。
(桔梗)
……うん、わたし、これにする。
(星蘭)
よし、バッチリ承った!
ボクが代わりに注文しとくからね!
届いたらこっそり持って行くよ☆
(桔梗)
ありがとう、夜町先輩。
(星蘭)
ふふっ、お礼には及ばないさー☆
▽大人びた声色で。
月乃ちゃんと仲良くしてくれて、
ボクからもお礼を言いたいくらいだからね。
▽普段の調子に戻って。
ふっふっふー☆
よーしっ、そろそろ施術に戻ろっか☆