ご耳愛
さ、お待ちかね。
本格的なご耳愛に入るわよ。
そのままベッドへ、横になってくれるかしら?
うん、履き物は脱いで…ふふ、いいから、私のように、シーツの雪原で泳いでみなさい!
んふふ、そうそう、泳いで泳いで♪
ほら、君だって、まんざらでもないじゃない。
うん…人は想像力の生き物よ…んふふ、元気なお魚ね。
泳いだら、その枕にたどり着いてね。
あるでしょ、茶色い穴があいた枕が。
ドーナツ枕っていうのよ、かわいい名前でしょう?
ん、そうそう…ドーナツの穴に、耳をいれて寝転んでちょうだい。
って、まだもぞもぞ…よっぽどシーツで泳ぐのが、気に入ったようね…それは構わないけれど、私のご自愛よりっていうのは、やけちゃうわね。
さ、耳だけでも私に差し出しなさいっ♪
そう、ここからが本番…耳かきでのご耳愛よ♪
じゃあ、耳かき棒、入るわ…。
ぴちぴち動いててもいいけど、危ないわよ?
ん、大人しくなったわ、意外と素直じゃない♪
んっ
んしょ…
んふぅ
んっ
んんっ
君、耳の中、ドライな感じなのね…いい音が、ここまでしてくるわ♪
心地いいわよ…。
嫌ね…そういう音に快感を覚えるからって、変態嗜好というわけじゃないのよ。
君だって、私の耳かきに、少なからず快感を覚えてくれているはずよ。
んふふ、聞こえないと思ってるのかしら。
季節の音に混じって、ここまでしっかり、吐息は届いてるのよ。
どんな吐息かしらね…私にだけ聞こえる事にしておくわ。
んっ
んしょ…んっ
んあっ、
んっ
んんっ
んしょ
はい、もういいわね…今度は、梵天…ふわふわのふさふさで、もしゃもしゃするのよ。
ぎ、擬音ばかりでかわいいじゃないのっ。
君に、わかりやすく、言ってるだけよ、まったく。
入るわよ…
んっ
んんっ
んっ
んふぅ
はい、おしまい…名残惜しいかしら?
仕方ないわねぇ。
(耳を吹く、耳吹きでは意図して息を吸うブレスも入れてください、わかるように、強めに吹いてください)
ふぅ~、ふぅ、ふぅ~♪
あら、何かしら…物足りないんでしょう?
んふふ、味わいなさい♪
ふぅ~、ふぅ、ふぅ~、ふぅふぅふぅ~♪
ふぅ~、ふぅ、ふぅふぅ~、ふぅ~、ふぅ~♪
はい、こっちはおしまいよ。
んっ、反対の耳ね。
はい、ありがとう。
あぁ、そうね…こっちにむいたら、外の風景が見えるわね。
生き生きした緑…新芽が空の青を掴もうとしてる。
春の息吹だわ。
…え、私も見える?
ふふ、大丈夫よ、視覚に頼らなくても、私はここにいるわ。
ずっと感じてるでしょう?
じゃあ、なかったら、いったい誰が、君にご耳愛してるのかしら?
じゃあ、耳かきするわよ…。
ん?
いいわよ、ずっと、君が見ていたいものを見ていれば。
ただし、私は君のお耳しか見てないけど。
んふふ、当たり前でしょう?
そうしないと、手元が乱れちゃうわ。
それでも、いいなら…だけど?
ん、よろしい。
ん
んんっ
んあっ…
んふぅ
んっ
んんっ
シーツで泳いでいた理由?
言ったと思うけれど、降らなかった雪が、愛しかっただけよ。
ゆき去った季節が惜しかったわけじゃないわ。
ここにいれば、季節は巡るし、また冬は来る。
それに、一年中同じ季節にいたとしても、私は巡らずを惜しんだりしないわ。
んっ
んふぅ
んんっ
んっ
ふぅ
んんっ
惜しむとすれば、その季節、時間に、本人がやり残した事があるからよ。
好きを、そこに置き去りにするのが、つらいのよ。
君は冬が好きだったのかしら?
そう…雪も好きなのね。
どうして好きなの?
んっ
んんっ
んふぅ、んっ
そう…全部、白く隠してくれるから、なかった事にしてくれるから、か…。
私も雪は好きよ。好きは同じ。
でもね、君と同じ理由じゃないわ。
私が好きなのは、雪が降って積もったあと、そこから覗く、わずかな色よ。
それを作ってくれる雪がすき。
白の中に浮かび上がる、姿。
あら、だって健気(けなげ)じゃない。
僕は私は、ここにいるって、訴えてる。
君だって、そうでしょう。
色の中に紛れていたいけど、本当は、見つけて欲しかった。
君を君だと、白の中から探して欲しかった。
声にならない声は、ずっと雪原に響いてた。
言葉にならない声は、誰にも届かない…なんて、ばかりじゃないのよ。
ほら、私には届いたじゃない♪
んふふ…今は、お耳が、いっぱいかりかりして欲しい所を見つけてって言ってるけどね。
んっ
んんっ
んふう
んあっ
んっ
私が君を見つけたわけじゃない。
ここへ来たのは、君自身。
君が、心でそう叫んだから、道が出来た。
誰かの導き…そうかもしれないわね。
けれど、君は、ここへ来るっていう選択をしたの。
そして、私を見つけた。
私は、君を見つけた。
声は、雪原を越えて、重なったのよ。
さ、ご耳愛も仕上げよ…梵天をつかって…。
んっ
んんっ
んっ
んふぅっ
はい…あとは…。
ふぅ~、ふぅ、ふぅ~、ふぅ。
そうね、春風かもしれないわよ、耳に触れる、耳で感じる季節ね。
ふぅ~、ふぅふぅ、ふぅ~、ふぅ~、ふぅ。
ふぅ~ふぅ~ふぅ、ふぅ~、ふぅ~~~。
ご耳愛、完了…君にも、次の季節が来たわ。