Track 3

姉さま、放課後までなんて待てません!!

「あっ、お姉さまやっぱりここにいらっしゃいましたね。  なんという偶然、これは運命だったりするのでしょうか」 「なーんて、教室に伺ったのですが、いらっしゃらなかったので」 「もしや……私といっしょにお弁当を頂きたくて  お友達の輪を抜けてわざわざこのような場所にひとりで……」 「ふふっ、冗談ですよ。お姉さまはこの季節の晴天の日は  屋外で昼食をなさるのがお好きですからね。  このベンチはお姉さまの特等席ですね」 「あの……お邪魔でなければ、ごいっしょしてよろしいですか?  お姉さまのことを考えていたら、放課後まで我慢できなくなってしまいまして……」 「本当にお一人が宜しければ無理にとは言いませんが……  お姉さまもたまには一人でこう……考え事をしたかったりとか……」 「ふふっ、ありがとうございます。  では遠慮なくお隣、失礼しますね。よいしょ……っと。」 「やはりここは良いですね。  風も日差しも、とっても気持ちが良いです。」 「それになにより、お姉さまの隣というのが一番良いです」 「お姉さまがたまーにこうやってここに来るのも頷けますね。  そのときは殆ど私もいっしょですけどね、ふふっ」 「では、お弁当頂きましょう?  本日も腕によりを掛けさせて頂きましたので」 「ふふっ、お弁当を開ける瞬間の表情、  いつ見ても私まで嬉しくなってしまいますよ?」 「あっ……お、お姉さますみません。  私としたことが粗相をしてしまいました……よよよっ……」 「お姉さま……朝食、オムレツでしたのに出し巻き卵、入れちゃいました……」 「お姉さまが私の出し巻き卵、美味しいって言って下さるのでつい……。  なんだかお姉さまのことを考えていたらテンションがあがってしまって……」 「あ、でもですね、卵は1日3つくらいまでなら大丈夫なんですよ?  ですので、安心して召し上がって下さいね」 「それではお姉さま、頂きましょう。いただきまーす」 「それではまずは……煮物から……あむっ……もぐもぐ……  うん、冷めるとやはり味が落ち着きますね……もぐもぐ……」 「お姉さま、いかがです? 煮物の味付けは濃すぎません?  見てください、スコッチエッグもこんなに上手に……」 「ああっ……スコッチエッグにも卵ですね……私としたことが……よよよっ……」 「そういえばお姉さまは……ハンバーグが好きだなって……。  ハンバーグにするなら、豪華に卵を入れようって……」 「あっ……お姉さまそんな……おいしいだなんて……ありがとうございます。  本当に作った甲斐があるというものです……」 「きちんと明日からは卵が重複してしまわないように気を……」 「えっ? お、お姉さま? 私の分はございますよ?  で、ですが遠慮なく……頂きます。あーん……もぐもぐ……」 「ふふっ、5割り増しくらいおいしいです。  ではお返しに……お姉さまも、あーん……」 「……お姉さま? 私にするのは良くて、  自分がされるのは恥ずかしいと……?」 「別に誰も見てなんかいませんよ?  もし見られていたら、見せ付けてあげれば良いじゃないですか、ふふっ」 「はい、あーん。あーんしてくれないなら、私が食べますよ?」 「ふふっ、お姉さま、素直で宜しいですね。では、どうぞ。あーん」 「どうです? 何割り増しくらいおいしくなりました?」 「あら、3倍ですか? それはうれしいですね。」 「では口移しで頂けたら、何倍おいしくなるんでしょうね?」 「ふふっ、さすがに私もそこまではしたりしませんよ?  ふふっ、もしかしてお姉さま、期待しちゃったりしました?」 「ととっ、お姉さま、あまりゆっくりするわけにもいきませんね。  お姉さまは午後移動教室でしたし、急いでお弁当、食べちゃいましょうか」 「ふふっ、お姉さまと食べるお弁当は本当に美味しいです。もぐっ」 「ええ、朝も夜もいつも一緒に食べていますけれど、  毎回欠かさずに世界で一番の幸せを感じていますからね」 「ふふっ、ではお姉さま、幸せのお裾分けですよ。  はい、あーん…………ふふっ、大きくお口を開いたお顔もかわいらしいです」 「あっ!!」 「はぁはぁ……お姉さまっ!! お帰りなさいっ!!」 「ふふっ、全然待ってなんかいませんよ、今来たばかりです!!  お姉さまを待つ時間はあっという間ですからねー」 「あっ、本日はお姉さま、お掃除当番でしたね。お疲れ様でした。  お掃除するお姉さまの姿も素敵でしたよ?」 「ふふっ、見ていたわけではなく、偶然見かけてしまっただけです。  偶然お姉さまがお掃除をしていた辺りをふらふらーっと」 「それはさておき、お姉さま、帰りはパフェ屋さんの予定ですね!!」 「この時間だと少し待ち時間があるかもしれませんが、  お姉さまとなら待つのも楽しいですから」 「混雑してしまう前にささーっと食べに行きましょう!!」 「あっ……お、お姉さまからお手を……あ、ありがとうございます」 「あ、あの、ちょっと走ったので汗ばんでしまっているかも……」 「え、えっと、そ、そういえばお、お姉さま!?  パフェは何パフェが良いでしょうか!?」 「えーっとですね、事前に調べた感じだと、  これから行くお店はキャラメルと  チョコとバナナのパフェがおいしくて……ごにょごにょ……」 「べ、別に恥ずかしくなんてありませんよ!?  手なんて毎日のように繋いでるじゃありませんか!?」 「う、ううっ……だ、だってお姉さまからだと……嬉しくて恥ずかし……」 「そ、そんなことよりっ!!   お姉さま、早く行かないと並ぶことになっちゃうかもしれませんよ!?」 「ささっ、行きましょう行きましょう!! パフェ食べにいきましょう!!」 「……お、お姉さまの手、やっぱり暖かくて柔らかいです」