Track 12

「浴場のひと時」

 カロが家に遊びに来ていた。 【カロ】 「すぅぅ……っ、んんー……やっぱり勇者さまのにおいだあ……くん  かくんか」  腕に抱き付いてきているカロは、俺の服に顔を埋めて鼻を鳴らして  いた。 【セシリア】 「もう、カロ。そんなに引っ付いて歩いて……。お兄さんが困ってい  るでしょう? 迷惑かけないの」 【カロ】 「んえー? ……お兄さん、困ってるの?」  素朴な声で訊いてきた。 【男】 「なに、この程度平気だ」 【カロ】 「平気だって」  勝ち誇った顔のカロ。 【セシリア】 「っ、もう……っ。カロを甘やかさないでください。貴方のために言  ってあげましたのに……」  反して、セシリアはむくれていた。 【カロ】 「ねーねー、セシリアおねーちゃん。勇者さまのにおいだよ? 勇者  さまのにおいだよっ?」 【セシリア】 「ふうん、そうなの」  興味がないようなトーンだ。 【カロ】 「なーんで旅人のお兄さんから、勇者さまのにおいがするんだろ……。  ねえ、なんで?」 【男】 「俺に訊くな」 【カロ】 「んぅぅ~っ、なんで?」 【セシリア】 「私に訊かれても……」 【カロ】 「だってだって、これホントに勇者さまのにおいだもん。くんくん…  …」 【カロ】 「……ん。やっぱり勇者さまだ。カロの鼻は騙せないぞう?」  じっ、とカロが俺の目を覗き込む。  子供の嫌疑も、積もれば無視できないものになるかもしれないな。  こいつが他の子供たちに吹聴しないようにしなくては。 【セシリア】 「はいはい、迷惑になるからそれ以上嗅ぐのはやめなさーい」 【カロ】 「ほーらー、セシリアおねーちゃんも一緒に嗅ご? 勇者さまだよ?」 【セシリア】 「え。ぁ、わ、私は遠慮しておく……」  頬を染めてやんわりと断った。 【カロ】 「えー、なんでー? 勇者さまのにおい好きでしょー?」 【セシリア】 「~~~っ、恥ずかしいことを言わないでぇ……っ」 【セシリア】 「思い出しちゃうじゃないですかぁ……」  顔を林檎のように朱に染めて俯く。  セシリアは、カロの純粋さに戦いていた。 【セシリア】 「っ、ほら、さっさと離れなさいっ。もう充分に堪能したのでしょう?  今日はもうお終い」 【カロ】 「んーっ! そうやって独り占めしようとするこんたんなんでしょー  っ?」 【セシリア】 「へっ。そ、そんなわぇ――んん゛っ」  噛んだ。 【セシリア】 「そんなわけないでしょう? カロはいつだってここに来てもいいし、  いつでもお兄さんを引っ張って行ってもいいのよ?」 【セシリア】 「ただ、もう暗いから帰りなさいってこと。カロの家は、ここから近  くないのですから」 【カロ】 「んんぅ……わかった」  物わかりはいい子だ。 【セシリア】 「はい、良い子ね」 【カロ】 「それじゃ、帰るでごわす。またね、セシリアおねーちゃん」 【セシリア】 「はい、気をつけて帰るのよ」 【カロ】 「ん。……旅人のお兄さんっ」 【男】 「ん?」 【カロ】 「ばいばいっ!」  満面の笑みでカロは帰って行った。 【セシリア】 「……随分と、カロに好かれているようですね」  じとりと見られる。 【男】 「なにかと子供たちには好かれる性分みたいでね」 【セシリア】 「あぁそうですか。そうですかそうですか」  なんだ? 【セシリア】 「貴方は子供が好きなのですか? ロリコンですか」 【男】 「何を言っている?」 【セシリア】 「……好きって言ったくせに。やっぱり、演技だったんですか」 【男】 「誰が」 【セシリア】 「……何でもありません。……この話題は禁止でした」  何事もなかったかのように台所へ帰っていく。 【セシリア】 「もうすぐ夕餉が出来上がります。湯船のほうも、すでに張っていま  すけど、どちらを先に済ませますか?」 【男】 「あー、風呂はいい」 【セシリア】 「は。……風呂はいい、というのは」 【男】 「今日は飯食って寝る。そういう気分だ」 【セシリア】 「な――っ! またっ、お風呂にお入りにならないと言うのですか  っ!?」 【男】 「血相を変えてどうした?」 【セシリア】 「いけませんっ! お布団に潜る前にきちんとお湯に浸かり、一日の  疲れを取って身を清めねばなりませんっ!」 【セシリア】 「もうっ、何度言ったら解るのですかっ! このやり取りは一体何度  目ですかっ? いい加減に聞き分けてください!」 【男】 「お前もしつこいやつだなぁ」 【セシリア】 「しつこくて結構ですっ! さあ、今すぐお風呂にお入りになってく  ださい!」 【セシリア】 「食後、目を離した隙に御就寝、だなんてことは許しませんよ。お入  りにならない限り、夕餉は無しですからね」  こいつ。 【男】 「なら飯なぞいるか。俺は寝る」 【セシリア】 「あっ――」  鬼の形相だったセシリアの表情が崩れる。 【セシリア】 「ご、ご飯を食べずに寝るだなんて、なんで、そんな……っ」 【セシリア】 「きちんと食べてくださいっ! 今日は貴方がお好きな茶碗蒸しを用  意しています、食べていただかないと困りますっ!」 【男】 「じゃあ先に飯にしよう」 【セシリア】 「……先に、お食事は……その……。きちんとお湯に浸かって下さる  なら、私は決して問題は……」 【男】 「それとこれとは話が別だ」 【セシリア】 「ぅぅ……。どうして今日はそんなに意固地なのですかぁ……。意地  悪です……」  どうしてだろうか。  いつも恭しくしているセシリアに反抗したらどうなるのを見てみた  かったのかもしれない。  そろそろ、いいだろう。 【セシリア】 「……でしたら」  切り返そうとしたとき、セシリアが言葉を継げた。 【セシリア】 「……私とご一緒なら、入って……くださいますか……?」  小動物のような懇願の仕方だった。  …  ……  … 【セシリア】 「失礼、します……」  扉の音と共に、セシリアが浴室に入ってきた。  バスタオルで胸と局部を隠し、おずおずと俺の傍にやってくる。 【セシリア】 「お……ぉ……お待ちどおさまー……? あ、あはは……」  緊張しながら的外れなことを言うセシリア。  含羞の色を含んだ顔は、日常生活では見られない初々しさがあった。 【男】 「さあ、やりたいようにやれ」 【セシリア】 「ぅぅ……。どうして貴方は、そんなに堂々としているのですかぁ…  …? 私はこんっなに恥ずかしいのに……」 【男】 「なにを。タオルで隠してるくせに」 【セシリア】 「た、タオルで隠していてもっ、恥ずかしいものは恥ずかしいのです  っ……! 少しでも動けば、すぐにずり落ちてしまいそうで……」  確かに、セシリアの豊満な身体を隠すには少々面積が小さいようだ。  胸の上で結んでいるタオルは、乳房のラインを的確に示す。  胸に持ち上げられたタオルは体の横に隙間を生み出し、セシリアの  脇腹や腰のラインは丸見えだ。  手で押さえることにより、どうにか局部の露出を拒んでいる。  瀬戸際の攻防だ。 【セシリア】 「んぅぅ~……っ! ……こんなことでしたら、大きめのバスタオル  を新調しておくのでした……」  着心地悪そうに身じろぎをする。  膝をすり寄せるように動くたびに、布の奥の内腿がチラチラと覗く。  いかん。  こっちまで恥ずかしくなってどうする。 【セシリア】 「……というか、貴方はどうして、その…………隠していないのです  か……。目のやり場に困ります……」 【男】 「俺は見られて恥ずかしいものなど持ち合わせていない」 【セシリア】 「そんなっ……、見られても恥ずかしくない、なんて……。ぅぅっ…  …!」 【男】 「さあ、そんなこと言ってないで。さあ」 【セシリア】 「っ……。……解りましたよ、いそいそしないでください」 【セシリア】 「……では、お背中から流させていただきますね」 【セシリア】 「えっと……石鹸は」 【男】 「ほら」  手の届く場所にあった石鹸を手渡す。 【セシリア】 「あっ。ありがとうございます」 【セシリア】 「それでは、泡立てますので、少々お待ちください」 【男】 「んむ」  浴室に石鹸を泡立てる音が響き渡る。  手のひらでこねているのだろう。 【男】 「……」  ふと、疑問に思った。 【男】 「……なあ」 【セシリア】 「……? はい、なんでしょう」 【男】 「タオルは使わないのか?」  水切りに掛けてある麻のタオルを手に取る。 【セシリア】 「タオル……? あぁ、体を洗う用の麻のタオルのことですか」 【セシリア】 「……貴方は、そちらのほうがいいですか? タオルを使うほうがお  好みですか?」 【男】 「お好み、って……。お前これ使わずにどうやって洗うつもりだった  んだ?」 【セシリア】 「え。……私は、素手で洗います」 【男】 「素手?」 【セシリア】 「はい。石鹸をネットで泡立てて、手を洗うときの要領で体も一緒に」  初めて聞くやり方だ。 【セシリア】 「勇者様は、タオルを使ってごしごしと洗うのがお好きでしたから、  そうして麻のタオルも用意されていますが……」 【男】 「ほう」  このタオルはセシリアと共用ではなかったのか。  共用だったらなんだって話だが。 【セシリア】 「……どう、しましょうか。普段はタオルを使われているのでしたら、  そのタオルで――」 【男】 「いや、素手でやってもらおう」 【セシリア】 「……いいのですか? 素手で……」 【男】 「折角二人で入っているんだ」 【男】 「いつもと違う風にしてみるのも面白い」 【セシリア】 「そうですか……。……解りました」 【セシリア】 「それでは、このまま洗っていきますね」 【男】 「うむ」  背中に触れられる感覚。  ゆっくりと撫でるような動き。  洗うというよりは、本当にただ撫でているだけのようだ。 【セシリア】 「…………」  黙々と手を動かすセシリア。  口数少ない浴室に、水滴が落ちる音だけが響く。 【セシリア】 「浴室に入ってからも思っていたのですけど……」 【セシリア】 「傷跡が、全くありませんね」  肩甲骨辺りを撫でる。 【セシリア】 「……どんな冒険者でも、傷の一つくらいは作っているものです」 【セシリア】 「貴方は……本当に一介の冒険者なのですか?」  疑いの声。  それなのに、セシリアの声には期待の色が含まれていた。 【セシリア】 「皆誰しも、初めは弱者です。弱者ゆえに愚かな特攻を繰り返し、幾  つもの傷を作って、人は強くなるのです」 【セシリア】 「歴戦の戦士であろうと、どんな強者であろうと、例外はなく傷の一  つや二つ作っているものです」 【セシリア】 「貴方の体は……まるで……」  セシリアの生唾を飲み込む音が聞こえた。 【セシリア】 「たったいま誕生したかのような、美しさです」  腰回りをセシリアの手が動いていく。 【男】 「……」 【セシリア】 「……」  規則正しい息遣いが後ろから聞こえる。  セシリアは、一体なにを思って発言したのだろうか。  単純に『綺麗な身体をしていますね』と言いたいだけだったのか?  それにしては皮肉めいた言い方をしていた。  冒険者にあるまじき肉体を持った人間とでも言いたげだ。  ……きっと、セシリアが言いたいのはこうだろう。  『貴方は、勇者様の生まれ変わりじゃないのか』――と。 【セシリア】 「……肩のほう、洗っていきますね」  声のトーンを変えて言った  セシリアの手が上に滑っていく。 【セシリア】 「っ、んっ……。ん……肩は凝っていません、ね」  肩を揉むようにして息を吐く。 【セシリア】 「……もっと肉体労働をしてはどうですか? ご立派な肉体が泣いて  いますよ」 【男】 「気にしなくても、ここを出たら嫌でも仕事がある」 【セシリア】 「む。またそういう意地悪なことを言う……。ここを出る話は禁止で  す」 【セシリア】 「今は一緒に住んでいるんですから、今の話をしてください」 【セシリア】 「将来ここを出て、仕事をすれば肩を凝るようになるーだなんていう  話は戯言です。……面白くありません」 【男】 「ふうん」  こいつも変わった。  前までは、さっさと俺に認めてもらって一人で暮らしていこうとし  ていたくせに、今は全く違う。  俺に認めてもらいつつ、共に暮らしていきたいという気持ちが伝わ  ってくる。  情が移ったのだろうか。  ……いや、違うか。  結局、俺と勇者を重ねて見ているんだろう。  勇者に似た俺を、傍に置いておきたい。  そんなところだ。 【セシリア】 「……」  セシリアの手が止まる。 【セシリア】 「……そんなに、ここを出たいのですか……?」 【男】 「……」 【セシリア】 「別に……私は、一緒に貴方と暮していくのも……悪くない、と……」 【男】 「セシリア」 【セシリア】 「え。あ、はいっ」 【男】 「いまお前は、何をすべきだ?」 【セシリア】 「……? えっと、……いますべきなのは、お背中を流すこと……で  すか?」 【男】 「正解だ」 【セシリア】 「むぅ……。……いけず」 【男】 「何か言ったかー?」 【セシリア】 「っ、なんでもありませんっ」  そう言うと、腕を手を滑らせていく。 【セシリア】 「……はい、肩口から指先まで洗っていきますよぉ。っ、ん……」  洗い易いように肘を曲げてやる。  それでも指先まで洗うには距離が足りないらしく、セシリアは前傾  姿勢になった。  自然と背中に胸が押し付けられる。  ……。  気にしていないみたいだ。  気にしているのは俺だけか。 【セシリア】 「んー……、んっ、ん……っと。はい、終わりました」  背中の柔らかさが消えた。 【セシリア】 「背中と腕は洗い終えましたよ。あとは前だけですから、ご自分で…  …」 【男】 「なにを言っている?」 【セシリア】 「――え」  素っ頓狂な声を上げる。 【男】 「全部お前がやるに決まってるだろう」 【セシリア】 「ぁ……、あはは……。やっぱり、前も私がやるのですね……」 【セシリア】 「ぅー……ぅぅ……」  小さい声で唸りながらも、ゆっくりと立ち上がる。 【セシリア】 「解りましたよぉ……。やります、やりますー……」  口を尖らせて言うと、ゆっくりとした足取りで回り込む。 【セシリア】 「前、失礼しますね……?」  恥ずかしそうに目を閉じながらしゃがみ込んだセシリアは、俯き加  減に瞳を開ける。 【セシリア】 「ぅ……。あ、あの……」  目を開いた先にあったものに目を奪われたように注視した。  赤かった顔は更に赤くなり、耳まで染まっていく。 【セシリア】 「……隠さなくてもいいのですか……?」 【男】 「なにをだ?」 【セシリア】 「だから、あの……。……これ……っ」  生唾を飲んだ。  提言をしているものの、セシリアの視線は決して局部から離れるこ  とはない。  ほうっと息を吐きながら、セシリアは口ずさむ。 【セシリア】 「……普段は、こんな見た目をしているのですね……」 【セシリア】 「下を向いて……元気がないみたいです」 【男】 「解説せんでもいい」 【セシリア】 「っ、別に解説をしているわけではっ!」 【セシリア】 「っ……。お胸、洗っていきます……」  泡の付いた手が鎖骨の下へ伸びる。 【セシリア】 「……、ん……ん……」  手を動かすたびに、セシリアの鼻から息が抜ける。 【セシリア】 「…………。っ……」  頬を染めながら手を動かし、視線を下に向けては慌てて元に戻し、  さらに頬を染めていく。  恥ずかしいなら見なければいいものを。  というか、そんなにチラチラと見られては、俺も期待に応えたくな  るだろう。 【セシリア】 「……っ! あ……っ、あのっ」 【男】 「ん?」 【セシリア】 「段々……膨らんできました……っ」 【男】 「気のせいだろう」 【セシリア】 「え? ぁ、だって……ほらっ、先端が上を向いてきて……っ」  律儀に状況説明をするセシリア。  初々しい反応に、ますます血液を送り込んでいく。 【セシリア】 「大きくっ、な……って、……っ!」  何度も喉を鳴らし、息を呑むセシリア。 【セシリア】 「っ……はぁ……」  白い頬を含羞の色に染めているのに顔を逸物に向け、しっかりと観  察していた。  熱心に注がれた視線に応えるように、ビクンビクンと脈を打ちなが  ら天を向いていく。  セシリアの顔を目がけて、大きく成長していく。 【セシリア】 「……びんびんになりました」  ぼそりと呟いた。 【セシリア】 「……――っ! あ、っ、お胸を、洗いますっ! ……っ、ふぅっ…  …」  顔を上げ視線を水平に保つと、ぎゅっと目を閉じて俺のあばらを撫  で始めた。 【セシリア】 「ん……ふぅ……、っ……ふぅぁ……はぁ……」  少し、鼻息が荒いように感じる。  手の動きも鈍い。  あばらを撫でたかと思えば、躊躇したように手を止め、思い出した  かのように手を滑らす。  ぎこちなく指が動いていた。 【セシリア】 「……っ、つ……次は、お腹のほうを……ん、っ……」  呼吸を整えるように息を吐きながら手を下げていく。  瞳を閉じているため、手を動かす最中に目測を誤って逸物が腕に当  たる。  その度に大袈裟に肩を震わせる。  可愛い奴だ。 【セシリア】 「……、ん……ん……ふぅ……」  ぎこちない動きで脇腹や臍、下腹部を慎重に撫でていくセシリア。 【セシリア】 「っ、と……、ん……んん……ぁ……、はぁ……」  手を止めた。 【セシリア】 「…………。終わり、ました」  ゆっくり目蓋を上げていく。  俯いた顔は逸物を見つめ、次に俺の顔色を窺った。  被虐的な顔をしている。  潤んだ瞳が俺の心を黒く染める。 【セシリア】 「……あ、あの」 【セシリア】 「つ、次は……その、どこを……洗いましょうか……?」  視線はすでに肉棒へ向いていた。 【セシリア】 「仰っていただければ……私は、どこでも……」  神妙な心がけだ。 【男】 「そうだな……」  セシリアの手は、ヒクヒクと脈打つ逸物へ伸びかけていた。  その手をそっと掴み、下ろしてやる。 【男】 「足」 【セシリア】 「え……。あし……?」 【男】 「まだ洗ってないだろう?」 【セシリア】 「あ……。あ、あぁっ! そっ、そうですねっ! まだ、足のほうを  洗っていませんねっ! あはは、そうです、そうですねっ」  なかなか苛め甲斐のある奴だ。 【セシリア】 「っ……。では、失礼しますね……? ……っ」  手が膝の上に下りてきた。 【セシリア】 「っ、しょ……ふぅ……ふっ、ん……っ……」  俯いた顔の視線の先で、手が動く。  もう目を閉じることはしない。  右に左に動く瞳で観察している。  見せつけるように、逸物を上下に跳ねさせてみる。 【セシリア】 「……わ。すご……っ」  思わず感想を漏らす。 【セシリア】 「……太い、です……」 【男】 「何がだ?」 【セシリア】 「え? ……あ、あぁっ! あ、足がーですっ! 足の太さが、です  よ? ははは……」 【男】 「くくくっ、そうか」  笑いが零れる。  良い反応をするじゃないか、セシリア。  そんなつもりはなかったんだが……。今日はとことんやれるところ  までやってやろう。 【セシリア】 「……ん、ん……っと、……ふくらはぎ……っ、あしー、くーび……  っ」 【セシリア】 「上に戻って……えと、……ふと……もも……っ! っ、ん……っ!」  あくせくと手を動かして足を洗い終えたセシリアは、ばっと顔を上  げた。 【セシリア】 「――っ! はっ、はいっ! 終わりましたっ! 終わりました!   全部洗い終えましたっ!」 【セシリア】 「では、泡を洗い流しますね! 熱いかもしれませんが、我慢してく  ださいっ!」 【男】 「あ、こら」  桶を手に取ると、浴槽から湯を掬い体に付いた泡を流していく。 【セシリア】 「あ、あ……熱くない、ですかー? 大丈夫ですかー? そうですか  ー、よかったですー」 【男】 「無視するな」  俺の顔は一切見ない。  ただ黙々と泡を流していく。  何度かそれを繰り返し、俺の体から泡がなくなってからセシリアが  口を開く。 【セシリア】 「ん、はい。綺麗になりました。全身の泡も流し終えましたし、綺麗  になりましたね」 【セシリア】 「あとは湯船に浸かって、ゆっくりしていてください」 【セシリア】 「では、私はこれで……」 【男】 「逃がすかバカ」  立ち上がりかけたセシリアの肩を掴む。 【セシリア】 「ぅぅっ、痛い痛いイタイ……ごめんなさいぃっ」  持ち上げかけていた腰を沈めていく。 【男】 「まだ全部洗ってないだろ?」 【セシリア】 「ぅぅ……。でも、あの……そこを洗うのは……そのぉ……」 【男】 「何か問題があるのか?」 【セシリア】 「ぅぅ……問題大有りですよぉ」 【男】 「気にするな。さあ」 【セシリア】 「んぅ~……っ、強引なんですからぁ……」  なんてことを言いつつ、拒もうともせずここにいるんだからこいつ  もこいつだ。  興味津々と言ったところか。 【セシリア】 「……」  視線が肉棒に注がれる。 【セシリア】 「……あ……。何か、垂れてきています……」  長い時間勃起していたため、鈴口から先走りが溢れ出ていた。  上目で俺を見遣る。 【セシリア】 「……どうしても、私に……あの、洗って……ほしい、ですか……?」 【男】 「……あぁ」  そっと頭を撫でる。 【男】 「頼む」 【セシリア】 「……」  どこかぽうっとした顔をすると、静かに頷いた。  それから静止。  誰も身動きしない浴室に、お互いの息遣いだけが耳に届く。  緊張したように呼吸を乱すセシリアが、恐る恐る手を伸ばしてくる。 【セシリア】 「…………、っ……。熱くなっています……」  しなやかな指がすぅっと逸物を撫で上げる。  そして、先走りを垂らす鈴口を人差し指でこねた。 【男】 「っ……」 【セシリア】 「先端も、こんなに濡れて……ぅあ、ぬるぬるしています……」  心ここにあらずといった具合で、カウパー液を亀頭に塗り拡げてい  く。  まるでそうするのが当たり前かのような動きに、俺の逸物が戦慄く。 【セシリア】 「ぁ……。ねとねと……、わぁ……」  軽く閉じた手のひらの中に亀頭を差し込み、先走りを全体に塗り拡  げていく。  扱きやすくするために、手が自然に動いてしまっているという感じ  だ。  心は解っていなくても、手は理解している。  より扱きやすくするために、カウパー液を使うことを選んだのだろ  う。 【セシリア】 「……ん、……。ほぉ……、は……」  関心するような吐息を漏らしながら、指をしっかり絡めていく。 【セシリア】 「……硬い、ですね。……痛くない、ですか?」 【男】 「大丈夫だ」  頭を撫でる。 【男】 「もっと強く握ってもいいぞ」 【セシリア】 「もっと強く、ですか……。っ……これっ、くらい……? もっとぎ  ゅって握ったほうがいいですか……?」 【男】 「っ、いい感じだ……」 【セシリア】 「あ……。はい……このくらいで」  少しきついくらいに握ってもらって、逸物を扱いてもらう。 【セシリア】 「はぁ……、っ……ふ……、ほぉ……」  やはり、色っぽい吐息を零しながら手を動かしている。  我武者羅な動きではなく、ゆっくりと丁寧だ。  まるで俺の喜ぶところを的確に探っているような動き。 【セシリア】 「…………あ、ピクンて跳ねました……」  ぼーっとしていたセシリアが弱点を発見する。  軽く目を見開いて驚きの声を上げた。 【セシリア】 「……ん、と……。確か……、……ここ……?」  両手を使って逸物全体を扱き上げるセシリアが、俺の弱いところを  もう一度刺激していく。 【セシリア】 「段差になっているところ……。この、先端の膨らみが始まるところ  ……、ですか……?」  先端に近いほうの手で作られた輪が、カリ首を擦る。 【男】 「っ……」 【セシリア】 「あ、跳ねた……。……ここ……、ここ……ですか……?」  両手で逸物を圧迫させながら、親指と人差し指で作った輪を窄めて  カリ首を刺激する。  肉棒の反応を確かめ、次に俺の顔色を窺う。  潤んだ瞳で俺を見つめ、真っ赤な顔で微笑む。 【セシリア】 「くすっ……。ここですね……?」  小指と薬指を立てた右手がカリに近づく。  命令したわけでもなく、三つ指で作った輪でカリ首を含めた亀頭全  体を素早く搾っていく。  左手で幹を擦るのもやめない。 【セシリア】 「……っ、ん……ん、……んぅ……っ」 【男】 「っ……!」  腰が浮きそうになる。 【男】 「洗うんじゃなかったのか……?」 【セシリア】 「え……? あらう……。……あ、そっか……。そうでしたね……。  洗うために、触って……」  自分のしている卑猥な行為に気付いてもなお、その手の動きに躊躇  いは見られない。  意志と反したように、無我夢中でセシリアの両手が動く。 【セシリア】 「……でも、こんなにびくびくして……」  くちゅくちゅと擦る音が反響しやすい浴室に響き、逸物は過敏に反  応する。  不思議な動きを観察するように、セシリアは執拗に肉棒を愛撫する。 【セシリア】 「匂いだって、凄い……すぅ……、はぁぁ……っ」  短く深呼吸をする。 【男】 「セシリアは、匂いフェチか何かか?」 【セシリア】 「え……。私が、匂いフェチ……? ……そんなことは、ないと……  思いますけど……」  しっかりとした手つきで、手首のスナップを利かせながら亀頭を扱  く。  ぼーっとした表情からは想像できない手の動きにぞくぞくする。 【セシリア】 「……でも、この匂い……すぅ……」  少し腰を屈めて、息を吸う。 【セシリア】 「……。……嫌いじゃ、ないです」 【男】 「ふうん……」  なんか、押せばなんでもしてくれそうだな。 【男】 「セシリア。顔をこっちに」 【セシリア】 「……? はい、なんでし――んむっ」  無理やり唇を奪う。  一瞬驚いたように目を見開くが、すぐに目を閉じて侵入する舌を受  け入れた。 【セシリア】 「ん……ちゅ、ちゅぅ……ちゅぴ」  慎ましく俺の舌を舌で押し返す。  そんな行為も唾液で滑り、ままならない。  結果的に舌を絡めるような動きになり、鼻から抜けるセシリアの声  が色っぽくなった。 【セシリア】 「ん……んふ……っ、ちゅ……ちゅ、ぷ……ちうちう……、ちゅぴっ」  口づけを交わしながらも、セシリアは上下させる手を止めない。 【セシリア】 「ちゅ、ん……、っ……っぷぁ」  目をとろんとさせて息づく。  上下する胸と共に動くタオルに、二つのポッチ。 【セシリア】 「ふぅ……はぁ……、……いきなり、どうしたんです――んゃぁ♪」  タオルの上から突起物を指先で弾く。 【セシリア】 「ぅっ、ちょっと……何して――んんっ……! やめ、ぇぅっ……乳  首、弾いちゃだめっ……ですぅ……――んっ、ちゅぴっ」 【セシリア】 「ちゅ、ちゅぅ……。ん、んんっ……! んゃっ! んっ……胸、揉  むの禁、止……で……っ、ん!」  手にしっかりと重みを感じる胸だ。  持ち上げるようにしてタオルの上から何度も胸を弄ぶと、はらりと  タオルが肌蹴ていく。 【セシリア】 「ちゅ、ちゅぴ……んっ、ん! ん、ぁっ! っ……タオル、取らな  いでください……っ」 【男】 「わざとじゃない」  けど落ちたタオルは拾って後ろに投げる。 【セシリア】 「はず……っ、はずかしい……ですからっ……返して、っ……見ない  でくださいぃ……っ」 【男】 「こんなに綺麗なのに。勿体ないことを言う」  雪を欺く裸体を撫でる。  手の甲で乳首ごと胸を押し上げてみる。 【セシリア】 「っ、ん……っ♪ ゃぁ……っ♪」  可愛い声で鳴いた。 【セシリア】 「触らないで、くだっ……ぅんっ♪ はぁぁ……っ、ぅぁっ……だめ  ……っ、だめです……っ、乳首、弱っ……ぁっ♪」  胸を優しく愛撫されて、甘い声を漏らすセシリア。  キスされても夢中で上下させていた手の動きは、止まっていた。  しかし……。 【セシリア】 「見ないで……ぅぁっ、触らな……ぁっ♪ んん~~っ……、直接触  るの……はぁっ♪ ぁ、ぅん……っ」  親指は未だに鈴口を左右に擦り続けていた。  こいつ……。 【男】 「……実は好きだろ、こういうの」 【セシリア】 「へ……? べつに、にゃっ♪ ぅぅ……好きじゃ……ありません…  …んっ」 【男】 「こいつが好きじゃないのか?」 【セシリア】 「好きじゃないです……っ、だ……男性の、……ぺ、ぺにすなんて…  …っ、全然……ん、んっ♪」 【男】 「ほーう、そうかそうか」  セシリアの体を引き寄せる。  密着し、セシリアの胸が押しつぶされて変形した。 【セシリア】 「っ、わ……。……、……あ、あの……抱きしめて……どうかしまし  たか……?」 【男】 「さっきみたいに上下に擦れ」 【セシリア】 「……? は、はい……。ぎゅぅっと握って、上下……っ。……こう  ……っ、ですか……?」 【男】 「そうだ」  なんの文句も言わずに上下運動を再開させる。  何だかんだ言っても、やっぱりコレが好きだろ?  ……と言うと反論しそうなので、言わない。 【セシリア】 「っ、しょ、と……。ん……抱きしめられていると、窮屈で……少し  遣りにくいです……」 【男】 「我慢だ」 【セシリア】 「ん、っ……ぁ……はい……。……ん、んっ……」  意見を言うが現状を打破しようとはせず、できる限りのことを懸命  にこなそうとする。  相変わらず、こういうことに関しては健気だ。 【男】 「じゃあ、次はキスだ」 【セシリア】 「へ……? キス、ですか……? ……私から……、するのですか…  …?」 【男】 「そうだ」  微かに頬を緩ませ、恥ずかしそうにして視線を彷徨わす。 【セシリア】 「え……、えぇ……。は、はずかし……」 【男】 「やるんだ」 【セシリア】 「ぅ……。……は、はい……」  うむ、何となく解った。  こいつはスイッチが入れば、命令をなんでも聞く。  きっと、もっと過激なことでも押し通せばなんとかなるだろう。 【セシリア】 「……それでは、……、……ん、ちゅぅ」  押し付けるだけの芸のないキス。  何らかのアクションが来るのを待っているのか、唇を閉じたままじ  っとする。  俺は何もしない。  すべてセシリアがやるように任せる。 【セシリア】 「ん、んー……?」  薄く眼を開き、俺の顔を窺う。  俺は眉を動かして、続きを促す。  事の仔細を理解したのか、セシリアは口を割り、自ら舌をねじ込ん  できた。 【セシリア】 「……、っ……んぁむ、ちゅるるぅ……ん、ちゅぴ……、ちゅ……ち  ゅぅぅ……」  懸命に舌を動かしていくセシリア。 【セシリア】 「ちゅ、ちゅむ……ん、んふ……ちゅぅぅ……っ、ちゅぴ……ちゅ、  ん……んんっ……ぷぁ」 【男】 「……もっと、強くっ」 【セシリア】 「はふぅ、は……はいっ。……もっと、強くっ……んっ、ん……っ」 【男】 「そのままずっと……っ」 【セシリア】 「っ、ん……っ、しょ……っ、ん……はぁ……っ、……ぁむっ」  命じてもいないのに、セシリアが口を塞ぐ。  まるでそうするのが当たり前のような自然の動きに、俺の胸が高鳴  った。 【セシリア】 「ん、ちゅ、ちゅ……ちゅっ。……んんー、もっと口を開けてくださ  い……ぁ……ぁぁ、むぅ」  セシリアが顔の角度を変えて、奥まで味わおうとして更に舌を絡め  てくる。  驚くほどの積極化だ。  真摯とでも言うべきか。 【セシリア】 「んん……ちゅっ、ちゅ、ちゅぅぅ……んふ、フーッ……ん、ちゅぴ  ……ちゅるるぅ……っ、ん、んふっ……ちゅ、ちゅぴ」  セシリアの手が動く。  根元から先端まで余すところなく丹念に刺激していく。  ぞくぞくとした甘い痺れが陰茎を支配し、セシリアの積極的な口攻  めに頭もぼうっとしてきた。  やばい。  セシリアにすべてを任せてみれば恥ずかしがる面白い姿が拝める、  と思っていたが……。  これでは、翻弄されているのは俺のほうだ。  俺はセシリアの虜になっていた。 【セシリア】 「ちゅ、ちゅぅぅ……っ、んっ、んっ……! んふっ、ふぅ……ん…  …ちゅるっ、ちゅぴ……っ、ちゅぷ……ちゅるるっ……」  セシリアに射精の予感を伝えようにも、声を発せられない。  セシリアも口で呼吸をするのを諦めているのと同様に、俺も鼻呼吸  で必死だ。  腰が動く。  我慢の限界だ。 【セシリア】 「ん、んっ……ちゅ、ちゅぅぅ……っ、ちゅ、ちゅぴ……っ、ちゅる  るぅ……っ、んふっ、フーッ……ふーっ、ふ……っ、んんっ?」  俺は、セシリアの背中に回していた腕に力を込めた。  互いの体をより密着させる。  亀頭にセシリアの下腹部が当たった。 【セシリア】 「ん、ちゅ、ちゅぅぅ……っ、ちゅっ、ちゅぴ……ちゅるるぅ……、  ちゅぷ……っ、ちゅぅぅ……っ」  出るっ……!  びゅるるるっ! びゅぅっ! びゅっ、びゅくっ! 【セシリア】 「っ、ん――っ! っ、ぷぁっ……ん、ぁっ……出たっ、でましたっ  ……! どくどくって、……ぅあ……」  自身の腹部に感じる異物の温もりに体を震わす。 【セシリア】 「すごく……元気がいいです、ね……。……びくんっ、びくんって…  …。……跳ね回るたびに、精液が……たくさん出ていますよ……?」 【セシリア】 「わぁ……、ぁ……どんどん、出ます……、っ……ん……んっ……」  解っているのか、射精のタイミングに合わせて陰茎を握る両手を上  下させる。  射精の気持ちよさとの相乗効果で、更に数発ほど余計に精液を吐き  散らしていく。 【セシリア】 「っ、んっ! ん……ぁ……。……治まりました」 【男】 「……そうだな」  腕に込めていた力を抜いた。  数秒遅れて身を引いたセシリアは、視線をゆっくりと下ろしていく。 【セシリア】 「……わぁ……。どろどろ……です、ね……。手も……ぁ、お腹のほ  うも、凄いことになっています」  粘り気の強いゼリー状の液体がセシリアの臍に溜まっていた。  自重に負けてずり落ちていく精液をセシリアは呆けた顔で見つめて  る。 【セシリア】 「……精液……。見るのは、初め……て、じゃないですが……。ん…  …いや、まともに見たのはこれが初めてかもしれませんね……」 【セシリア】 「ほぉ……。液体と呼ぶには、粘度が濃いです……。まるで、ゼリー  のような……濃厚な、……」 【男】 「……セシリア」  頭を撫でる。 【男】 「お掃除だ」 【セシリア】 「え……? お、おそうじ……?」  キョトンとした顔で見つめる。 【男】 「お前は洗うために、ここを触ったんだろう?」 【男】 「務めを果たさないとな」 【セシリア】 「あっ……。は、はいっ、……そうでしたね。私は、綺麗にするため  に触っていたのですから……」  そう言うと、じっと逸物を見遣る。 【セシリア】 「ん……それでは……、……」  俺が、セシリアに置いた手に軽く力を込めただけで、セシリアは有  無も言わずに顔を近づけていく。 【セシリア】 「ぁ……ぁむん」  優しく口に含んだ。 【セシリア】 「ん……ちゅ、ちゅぅぅ……ちゅ、ちゅぅ……ちゅっ、ちゅっ」  丁寧な舌遣いに、甘えるような吸い付き。  労わるような口淫に思わず息を吐く。 【セシリア】 「ちゅぅぅ……、ちゅっ……ちゅるっ、ん……んくっ、ちゅ……ちゅ  るるぅ……」  逸物に付着した精液を逃さないように吸い付いていく。  カリのくぼみに溜まったものもこそげ取るように、ねっとりとした  舌が縦横無尽に動き回る。 【男】 「ぅ、く……」  敏感な亀頭には堪らない刺激になって、声が漏れる。 【セシリア】 「ちゅぅぅ……ちゅ、ちゅる……ちゅ、ちゅぷぷ……ぁむ、んむ……  ちゅぷっ」  根元に垂れていく精液を求めて、セシリアの唇が下がっていく。  セシリアの舌の上を裏筋が転がっていき、痺れるような快感が襲う。 【セシリア】 「ちゅぅ、ちゅぅぅ……ん、んふ……ちゅぷっ、ちゅぽ……くぽ、ち  ゅぽっ……じゅる、ぢゅるるるっ……」 【男】 「っ、ぅ……ぁ……っ」  セシリアの頭が上下に動く。  付着した精液を綺麗にするのに必要のない動き。  射精後の敏感な陰茎に性的快感を与えるだけの行為に、俺は止める  こともできずにただ歯を食いしばるしかなかった。 【セシリア】 「ちゅぷ……くぽ、きゅぽっ……ちゅる、ん……んふ……、ちゅるる  っるるぅ……っ」  わざわざ息を溜めて、最後に長く激しい吸引を行うセシリア。  その吸引はセシリアの口が根元から亀頭に到るまで続いた。 【セシリア】 「ちゅぅぅっ……ちゅっ、ん……っ、ちゅるるっ……ん、んくっ……  ごくっ」  最後に尿道に残った精液を吸い取るように口を窄めると、喉を鳴ら  した。 【セシリア】 「っ、……ぷぁ……、はぁ……はぁ……、はふ……、綺麗に……なり  ましたよ」  顔を上げたセシリアは、俺を見上げると気恥ずかしそうに微笑んだ。 【セシリア】 「……気持ちよくなって、いただけましたか?」 【男】 「お前の務めはそれじゃないだろ……」 【セシリア】 「あ……そうでした。えぇと、……綺麗になりましたよ、……は、さ  っき言いましたから、うぅんと……」 【セシリア】 「気持ちよくしたかったのではなくて……私は、ただ……」 【セシリア】 「貴方に、喜んでほしくて……」  まったく、こいつは。 【セシリア】 「あ……やっぱり、これが一番正しいと思います」 【セシリア】 「……気持ち、よかったですか……? えへへぇ」  眉を八の字にしながらはにかむセシリアに、逸物がぴくりと反応し  た。