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■04
ほら、何もできないでいるからこの人はどんどん行為をエスカレートさせてくる。
胸をまさぐっていた手を制服の中に滑り込ませて、下着のキャミソールも引きはがして、素肌に触れてくる。
まずはお腹、おへその辺りに手を置く。
じんわりと手の熱さが染み込んでくる気持ち悪さにクラクラする……おへその中に入ってきたのはきっと中指。
くすぐるようにこね回してくる。
でも本当にさわりたいのはおへそなんかじゃない。
痴漢はすぐに手を上げて、ブラジャーに触れる。
まずは右胸から。お尻を包む時と同じように乳房を包んだ……でも、包めるほど大きくはない。
ガッカリしているかもしれない。
うぅん、むしろガッカリしてさわるのをやめてくれれば、どれほど嬉しいことか……でも、この人はやめない。
それどころか嬉しそうに感じている気がする。
右胸を揉む。さすって、撫でて、包み込んで揉む。
親指と人差し指だけが上下にすべって、乳首を軽く摘んだ。
チクンとした痛みに息を呑むと、すぐに指を離す……遠慮しているのかな。
今度は左胸へ……同じようにさすって撫でて、乳首をもっと優しく摘む。
今度は痛くない。でも、強烈な不快感がわき上がって、やっぱり息を呑んでしまう。
すると痴漢は手を離す……。
もしかするとずっと息を呑んでいればいいのかもしれない……でも、わざと息を呑むなんて器用な真似、私には到底できそうにない。
そんなことを考えている間も胸を揉まれ続けている。
はぁはぁ、んっく……すくい上げるようにして揉もうとするけど、そんなことをされても私の乳房は掴めない。
ようやくBカップになったばかりの乳房にこの人の手は大きすぎるから。
それでも懲りずにすくい上げては揉み、捏ねては揉む。
お尻と同じように揉むばかり……乳首をさわると過剰に反応するからか、時折手のひらで転がしたり指先でくすぐったりするだけ。
乳房を揉まれてもじんわりとした不快感があるだけだからお尻とそう変わらないけど、乳首は困る。
だから、少しだけ安堵して吐息を漏らす……だけどすぐにそれが間違いだと気付く。
痴漢行為そのものが不快なのだから、どこにも安堵する要素はない……胸を、お尻を見ず知らずの男性にさわられる恐怖と不快感、誰にも気付かれない、助けられない絶望感……あぁ。
はぁはぁ、気持ち悪い、ゾクゾクする……あぁ、私はいつまでこの怖気と共にあらねばならないのかしら……どうして私ばかりが? どうしてこんな酷い目に遭わされ続けるのか……。
あぁ、いつもは片手だったのに、ついに両手でさわり始めた……しかも胸とお尻を同時に? ブラジャーとショーツを同時にまさぐられる不快感に、全身が痺れていく感じがする。
左の乳首とお尻の穴を同時につつかれて、ヒッと息を呑む。
その自分の声が恥ずかしくて俯いてしまう私に、痴漢は更に容赦なく乳首を摘み、お尻の谷間を擦り続ける……あぁ、あぁ。
なんて拷問なの……なんでこんな責め苦を味わわなければならないの。
停車駅のアナウンスが遠くに聞こえ、次第に聞こえなくなっていく。
私には私自身の吐息だけしか聞こえなくなる……。