05-ネガティブ姉のオドオド耳かき
○ネガティブ姉のうしろ向き耳かき
失礼しまーす…。
う、うぅ…陽射しがっ…カーテン開けてるの…?
あなたの部屋道路に面してるのに…
ううん、あなたならそれでいいんだよね…やっぱりわたしとは違う。
…え、だ、だって…外から見えないかって気になるから…。
あ、これは自意識過剰な意味ではなくて…その、チラっと見えちゃった時に…
勘違いで自信家なバカ女が私生活見せつけてやがるって思われたら…
わたし、どうしたらいいか…。
あなたはいいんだってば…あなたの私生活なら見えても嫌な感じしないよ。
むしろわたし…見たいし…視線向けるのを禁止されない限りはずっと眺めてたいし……。
あああっ…じゃなくって…その、さっき…お昼ご飯の時に言ってたよね…。
耳ガサガサしてるって…えと、それで…お母さんが耳掃除したらって言って…
あなたが…その内自分でするよ……
や、やだ、わたし…人の会話の内容覚えて…ストーカーとかじゃないのっ。
あぅ…あの、わたし……
本当に例えばの話だから、本気で考えてるのとか言われると痛いの…。
…あなたの耳掃除を…わ、わたしがするのはだめ…かな。
あの、これ…最近の男の子は耳かき好きだって見て…通販で道具を買っておいたの…。
いつかあなたにお礼とお詫び…
わたしみたいな姉さんの弟でいてくれてありがとうしたくて…。
…つ、使い古しじゃないよ?
確認のために段ボール開けただけで、
ちゃんと買ったままビニールに入ってるから大丈夫っ。
もちろん嫌じゃなければだけど…ど、どうかな?
……うっ、あ…言っちゃった…誘っちゃった…わたし…
…ご、ごめんなさいっ、忘れて…。
…いいの?本当に?無理してない?
うぅ…無理してないのなら嬉しい…それじゃあ、横になってくれるかな…。
…ずりずり…ずりずり…近づいて…。
はふぅ…さ、さっきお風呂入ってきたから臭くないよね…。
め、綿棒…開けるね。
一本一本包装されてるのを選んだの…これなら未使用だってすぐ解って安心できる。
ごくっ…は、入るよ…。
う、動かないでね…いきなり動かれたらわたしびっくりして…
失敗しちゃうかもしれないから…うぅっ。
ゆっくり撫でるように動かして、んっ…んんっ、んぅ……取れたぁ。
あっ、耳垢取るの…痛くなかった?
…ん、だいじょうぶだね…ふぅ、んん…。
…え、綿棒は仕上用じゃないのかって…え、え、あわわ、どうなんだろう…。
人それぞれなのかなぁ…。
耳かき使うなんて…む、無理だよ…。
あんなに鋭いもの…あれ、竹でできてるんでしょう…!?
竹…竹刀…うっ……兜の上から打って相手を殺せちゃうような危険なもの…。
絶対無理ぃ…わたし…あなたに怪我させちゃう…。
…今だって目をつぶるだけで耳かきを突き刺されて倒れてるあなたの姿が浮かんで…。
あぅう…心拍数、あがってきちゃった…。
手を震わせないようにしなきゃ…綿棒でも危なくなっちゃう。
つ、突き刺さるは大袈裟だとしてもっ…
あなたの耳に怪我…血が出て……あなたはわたしを許さない…
わたしもわたしを許せなくなって…そしてわたしは一人……あぅ、やめろなの…?
こういうこと言わない…やめるから嫌わないでぇ…!
…う、ぐすっ…ごめんなさい、また想像で慌てちゃって…鬱陶しいよね。
え…手は止めないよ。
おしゃべりしてる間も止めないように…ちゃんとしてるよ?
自分で言い出しておいてすぐサボりやがって…そう思われたら…。
…あ、えぅ…あなたがそんな風に思う子だって言ってるわけじゃ…
あの、えっと…ご、ごめんなさい…ごめんなさい。
…わたし謝るの癖になってて…治さないといけない…のは重々承知なの。
先に謝って怒られないようにしてる…卑怯な奴に見えるだろうから…。
耳かきと関係ないことばっかり喋っちゃってる…だめ…。
本当はね、優しいお姉ちゃんが膝枕してあげて…
耳かきのうんちく語りながら掃除してあげたりしてくれて…癒されるんだって。
わたしじゃ遠く及ばなくても…せめて、きちんと耳の話しないと…。
あ、め…綿棒取り替えるね。
そうだった…こまめに新しいのにしないと…。
まっさらな綿棒にしたから安心してね…。
ん、ふぅ…うん、ちゃんと掃除できてるよ、あなたの耳垢。
あの…癒されたりとか気持ちいいとか…ど、どうかな…
あ、ううん…わたしにされたってせいぜい取れてマシになった程度だよね。
聞いてごめんなさい…ん、んんっ…はふ、大きな耳垢出せた…。
…わたしに比べたら…あなたの耳垢は十分綺麗だから…
垢って呼ぶのも違和感あるくらいなんだけど…。
ふえっ、あ…なんでもないの、ひとりごと…。
ひゃっ…お、奥にいっこある…あ、と、取るの?
…うん…すーはーすぅう…ん、いくね…っ。
ん…んふぅ……ん、っしょ…ふぅ……くぅ、落ち着かなきゃ…慌てたら…だめ。
わたし、慌てると…救えないレベルの不器用になるから…
…ぐすっ…い、今だけはしっかりしなきゃ…。
ん、ん…もう少し……ふくっ…ん…はあぁ…出たぁ…。
…は、はいっ。耳垢取れたの、どうぞ。
あぅ…つい嬉しくて渡そうとしちゃった…う、うん、耳掃除完了だよ…。
え…えっと、あなたが良ければなんだけど…
反対側も耳かきしたいから向き変えてもらえたりとか…しないかな?
わぁ、あ、ありが…ありがとう……。
じゃあ、こっちも耳かき始めるね…。
ん、んっしょ…うぅ、怖いよぅ……慎重にしなきゃ…ごくっ。
…え、いきなり始めないで…あ、ああっ、そうだよね。
まずは耳の中を見れば…変な緊張も減ってくれるはず…の、覗くよ。
ふぅ…んんっ……こっちと…この奥…大きな塊がついちゃってる…。
い、息かかちゃってないかな…?
歯磨きしてマウスウォッシュもしたんだけど…きょ、許容範囲には収まってる、かな…。
うん、見えたよ…ありがとうっ。
いつもより心拍数も少な目になってる…今のうちにやっていくね。
綿棒入るよー…し、失礼しま…いえ、失礼になっちゃいけないんだけど…。
んっんぅ…入り口の方からするんだよね…。
さっき見た時この辺りにたくさんついてたから…ん、ん…ふぅ……んんっ…。
もう少しこっちだったかな…ふ、ん…はぁふ……んん、んぅ……ふええっ?
え、な、なに…ビクッてしたけど…?
どうかしたの…あっ…ああぁ…わ、わたし…あなたに取り返しのつかないこと…!?
うぅ、償わなきゃ…でもわたしの人生なんかじゃ……。
…勘違い?…ここ、くすぐったいの…?
それって、い、嫌な感じ…じゃないんだ…。
はぁ…そ、そうだよね…人間誰だって弱いポイントがあるよね…。
おでこにベタベタした汗かいちゃった…ちょっと拭くね…あ、あと綿棒取り替えなきゃ…。
いえ、その…綿棒変えるのがついでみたいに聞こえてない…かな…。
違うんだよ、わたしの汗拭くのがついでだからね…もちろんあなたが優先だから…!?
ああでも、汗臭さで気分悪くさせちゃったら困るし…うぅ…あのあのっ。
あ…はい、落ち着いて順番にやるね…。
ティッシュ持ち歩いてて良かった…。
ふぅ…わたし緊張すると冷や汗かいちゃって…は、恥ずかしい。
新しい綿棒…真ん中からビニール開けて…ん、っしょ…。
続きするね…さっき覗いたときに見えた大きな塊…だしてあげなきゃ…。
はふ…もう慌てないようにしないと…奥するのに危ないから…んんっ…ふぅ、ん…。
ま、また…怖い映像が頭に浮かんじゃうよ…やだ…
…はぁはぁ…ん…お、終わるまで耐えなきゃ…ん、ん…取れてきた…ホッ…。
こっちの塊も…と、届くかな……大分奥の方…
こ、鼓膜触らないように絶対触らないようにぃ…。
…わ、わたしが触ったりしたらあなたの鼓膜…
あぅう…えぐ…だから想像しちゃいけないってば…。
心配することない…って…うぅ、普通の人ならそうだろうけど…。
わたしドジだし何倍も気を付けないといけないから…
でも考えすぎると…ホラー映画見たいな光景ばっかり見えてきちゃって…。
…目、つぶるわけには…あぅ、い、いかないよね…。
あっ…と、届いたぁ…ぐすっ、えぐ…良かった…。
あなたの耳かきできてる…ん、んんっ…涙で視界ぼやけてきたよ…。
うぅ、だいじょうぶ…あとは引っ張り出すだけだからぁ…
だから怒らないで…嫌いにならないで…ね、ねっ……え、怒ってないの?
な、なかない…泣いてないよ、姉さん嫌われたくないから泣かない…
あなたに嫌われたら生きていけないもの…。
…はい…と、取れ…取れたぁあ……。
はあぁ…はぁはぁっ……怪我させずに終われた…。
本当に奇跡だよ…はふぅうっ、心臓バクバクして…やっ、手が汗でべったり…。
うぅ…他の家のお姉さんは普通にできてることなのに…
わたし緊張しすぎて…情けないよぅ…。