Track 2

酩酊と、熱の交換と…

【詩乃】 ん、しょ………よい……しょ………っ もう、ちょっと……んんっ……がん、ばって………っ ん……っ……っとぉ……っ! ふぅ~っ……なんとか布団までたどり着けた~……っ あの~~……だいじょうぶですか~? そのまま、うつ伏せになっててくださいね……背中、さすりますから…… もう、お酒弱いなら断ってくれてもよかったのに…… 結局そのおかげで、こういうことになっちゃうんだから…… ……ん、ごめんなさい……ちょっといじわるだったかな? だいじょうぶ……慣れっこだもの…… あ、介抱は慣れっこだけど、ここに上げたことはないの これ、私のお布団だから……吐いちゃ、ダメだからね? ………ん………よしよし……… だいじょうぶ、だいじょうぶだからね~……… ……お酒、強くないのに、居酒屋にフラフラと…… 心配になっちゃうから……無理しちゃ、だめよ? ふふっ……しばらく背中、さすっててあげるね…… ゆっくり息を吐いて……吸ってを、繰り返して…… ん……だいぶ、呼吸落ち着いてきたね どれ、仰向けになって、ちょっと顔を見せてちょうだいな? ……うん、うん……血の気が戻ってきたね、よかったよかった♪ え、と………服の中に、手を入れてみても、いいかな……? ちょっとね、お腹の具合、確かめたくて…… あ、そのまえに……は~~~~~~………は~~~~~~~……… こっちが冷たいまんまだと、意味ないから……ん、いいかな? あぁやっぱり……お腹、冷たくなっちゃってる…… ほんとに……こんなに弱いお客さん、久しぶりだわ 私の熱、もっていって……これもきっと、何かの縁だから…… だって……本当なら、絶対に来るはずのないお客さんだものね ……ん………あったかく、なってきた……… 染みてる? 私の熱……お腹を通して、全体に……… ……貴方、ここにきたとき、すごい顔してた…… すべてを失って、世界が色を失くしたような、そんな顔…… まるで……鏡で見た、最近の私の顔みたい…… もちろん、店ではそんなの、見せないけどね…… だから、追い返せなかった……追い返しちゃいけないと、思ったの…… 手を繋いであげないと……明日にでも、消えてしまいそうだったから…… ……ふふっ……人のことを、話しているのか…… それとも、自分のことを語っているのか……わからないわね…… ……はぁ……あったかい……やっぱり、冷たいよりも、あったかいほうがいいわ…… 私の熱が、貴方の熱を作って………貴方の熱が、私に還ってきて……… 触れ合うってほんと、ズルいわね……諦めていたものをまた、求めたくなるもの…… ……今晩、泊まっていってくださる? もう遅いから、電車も動いてないし……どこも、空いて無いから……