酩酊と、熱の交換と…
【詩乃】
ん、しょ………よい……しょ………っ
もう、ちょっと……んんっ……がん、ばって………っ
ん……っ……っとぉ……っ!
ふぅ~っ……なんとか布団までたどり着けた~……っ
あの~~……だいじょうぶですか~?
そのまま、うつ伏せになっててくださいね……背中、さすりますから……
もう、お酒弱いなら断ってくれてもよかったのに……
結局そのおかげで、こういうことになっちゃうんだから……
……ん、ごめんなさい……ちょっといじわるだったかな?
だいじょうぶ……慣れっこだもの……
あ、介抱は慣れっこだけど、ここに上げたことはないの
これ、私のお布団だから……吐いちゃ、ダメだからね?
………ん………よしよし………
だいじょうぶ、だいじょうぶだからね~………
……お酒、強くないのに、居酒屋にフラフラと……
心配になっちゃうから……無理しちゃ、だめよ?
ふふっ……しばらく背中、さすっててあげるね……
ゆっくり息を吐いて……吸ってを、繰り返して……
ん……だいぶ、呼吸落ち着いてきたね
どれ、仰向けになって、ちょっと顔を見せてちょうだいな?
……うん、うん……血の気が戻ってきたね、よかったよかった♪
え、と………服の中に、手を入れてみても、いいかな……?
ちょっとね、お腹の具合、確かめたくて……
あ、そのまえに……は~~~~~~………は~~~~~~~………
こっちが冷たいまんまだと、意味ないから……ん、いいかな?
あぁやっぱり……お腹、冷たくなっちゃってる……
ほんとに……こんなに弱いお客さん、久しぶりだわ
私の熱、もっていって……これもきっと、何かの縁だから……
だって……本当なら、絶対に来るはずのないお客さんだものね
……ん………あったかく、なってきた………
染みてる? 私の熱……お腹を通して、全体に………
……貴方、ここにきたとき、すごい顔してた……
すべてを失って、世界が色を失くしたような、そんな顔……
まるで……鏡で見た、最近の私の顔みたい……
もちろん、店ではそんなの、見せないけどね……
だから、追い返せなかった……追い返しちゃいけないと、思ったの……
手を繋いであげないと……明日にでも、消えてしまいそうだったから……
……ふふっ……人のことを、話しているのか……
それとも、自分のことを語っているのか……わからないわね……
……はぁ……あったかい……やっぱり、冷たいよりも、あったかいほうがいいわ……
私の熱が、貴方の熱を作って………貴方の熱が、私に還ってきて………
触れ合うってほんと、ズルいわね……諦めていたものをまた、求めたくなるもの……
……今晩、泊まっていってくださる?
もう遅いから、電車も動いてないし……どこも、空いて無いから……