Track 2

深化

白い、白い世界に、今君はいる。真っ白な世界。 上下左右、真っ白。中央に、浮かんでるのが、君。そう、浮かんでいるの。 ふわふわと、真っ白い世界で浮かんでいる。 ふわふわ。ふわふわ。自分が上になってるのか、下になっているのか……わからない。 でも、不思議と不安な気持ちはない。そうだよね? 安心してる。動けなくて、姿勢も不安定なのに、とってもリラックスしてるよね。 どうしてかな? ……そう、私がいるから、だよね。私の声が、言葉が聞こえてるから。 私が、君を導いてくれてるから、だから全部任せても大丈夫。安心。 ……真っ白な世界。ゆっくりと、ここを癒やしの空間に変えてみようか。 そう、癒やしの空間。落ち着いて、体を休めている君が、さらに癒やされる場所。 ……草原、なんてどうかな? とっても癒やされそうだよね。 特に、日頃良く行く場所でもありそうだしね。きっと、イメージしやすいよ。 それじゃあ、一つ一つ、草原に近づいてみようね。 草原で、一番最初に感じるのは……濃い草の香り。 光を浴びて力強く伸びる草木の香り。とっても良い香りだよね。 それに混じって、甘い花の香りもする。君は今、そういった草木に囲まれてるんだよ。 寝そべっているのは草むらのベッド。地面も、不思議と固くなくて、むしろ寝心地が良いくらい。 思わずお昼寝してしまいそうな、心地良い陽気が、君を包み込んでいる。 まばゆい光で、視界が少しまぶしいくらい……。でも、決して不快じゃない。 外に出た時、特有の気持ち良さ……独特な香り。草原で、寝そべるのって、とっても気持ちいいよね。 鼻で呼吸するたびに、生命の香りが、鼻腔をくすぐる……。 草木には、人の心を癒やしてくれる作用があるの。 ふわふわのベッド。軽く風が、君を揺さぶる。ゆらゆらー、ゆらゆらー……。 ゆらゆらー、ゆらゆらー……。どんどん、揺れていく。左右に揺れる。 揺れるたびに、草木の香りが、体に染み込んでいく。 青葉の香り……そんな世界に、落ちていく、落ちていく……。 ふわふわな世界に、落ちていく、落ちていく。 何もせずに、漂う。風に任せて、ゆらゆら揺れて、草原を飛び回る。 草木のベッドに乗ったまま……柔らかい草に乗ったま、空を飛んでいる。 まばゆい光へと近づいていく。青葉の香りが、強くなっていく。 さわやかな香り、それに、酔いしれながら、リラックス。リラックス……。 そして、気持ち良くなるたびに、空に落ちていく。まばゆい光に落ちていく。 落ちる、落ちる、落ちる……空に落ちる。落ちていく―――。 ……これから、カウントを開始するね。ゼロって言われると、君の意識は、最初の真っ白な世界へと、戻ってくる。 でも、ここで得た気持ち良さは、そのまま。安らぎも、そのままだから、安心してね。 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 ゼロ (20秒待つ) おかえり。草原は気持ち良かった? とっても不思議な世界だったみたいだね。 でも、とっても気持ち良くて、良い香りがして……リラックス、出来たみたいだね。 良かった。それじゃあ今度は、また違った場所に行ってみようか。 こうやって、色々な場所にいって体を癒やして活力を得ようね。 すればするほど、癖になる。私の言葉が、現実味を帯びて、支配的になっていくの。 そうすれば、もっともっと気持ち良くなる。もっともっと、深い深い場所に落ちていく。 深い場所。落ちれば落ちるほど、気持ち良い。まばゆい光に、落ちていく。 ね、素敵でしょ? だから、素直に従って欲しいなぁ……。 良いよね? ……えへへ、嬉しいな。それじゃあ、また、この世界から別の場所にいってみようね。 今度は、どんな所に行くのかな……? 次は……もっと非現実的なところがいいね。 非現実的で、ただ単純に気持ち良いとだけ感じる世界……。 それも落ち着く気持ち良さじゃない。それとは違う快楽。 ……そう、快楽、官能的な、気持ち良さを感じる世界。 不思議な世界。そんな場所に、行ってみようね。