3話目:上手に焼けました
[ホテル近辺をブラブラしてる二人]
とは言ったものの、この辺り、空いてるお店少ないな。
おしゃれなバーみたいなところは多いようだが、ああいう雰囲気は苦手だし、そもそも私はお酒が飲めない……
それに、お腹がすいてる時にはちゃんとしたものが食べたいよな。
なあお前。お前は今、何が食べたい気分なんだ?
(主「お肉が食べたい」)
肉か……確かに、スタミナの最大値を回復させるためにはこんがり焼けた肉が1番だもんな。
でも、そんなに都合よく肉を出してくれる店があるだろうか。
部屋にキッチンでも付いていれば、スーパーを探して買ってくることでお前の手料理が食べられるのだが……
(主「でも調味料とかないからちょっと面倒だね」)
あ、言われてみればそうだな。調味料を買いだすと結構コストがかかってしまうか。
(ちょうどいい感じのお店を見つける少女)
……む、ではあの店なんてどうだろう。
「ステーキハウスうしちゃん」……随分と安直なネーミングだな。ふふ。
牛のキャラクターがステーキを勧めているの、シュール以外の何物でもないと思うが、可愛いからいいのかな。
あそこでいいか?
(主「よし、行こう」)
ふふ。決定だな。
ぱっと見カジュアルな店構えだし、こんな服装でも大丈夫、だよな。
(主「気にしすぎじゃない?」)
いや、なんというかな。都会のお店というのは、些か身構えてしまうんだよ。
こういう所はきっと値段も高いだろうし、どうなのかなと思ってな。
ん。では。
[ファミレス調の内装のお店、二人がけの席に向かい合って座ってる]
(メニューを睨んで悩んでる少女)
ふむ……お肉、いろんな種類があるんだな……結構手頃な値段でよかったよ。
リブロース、肩ロース、サーロイン、赤身、ヒレ、シャトーブリアン……はさすがに値段が張るか。
なあ、お前。詳しいだろ?お肉はどれがヘルシーか、わかるか?
(主「カロリーが気になるの?」)
ん……いや、最近少し太ったかなと思って、な。
時々遊びに行く以外はあまり運動などしないし、お前の料理、とても美味しいからたくさん食べてしまうし……
(主「前が痩せすぎてただけだよ」)
そうか?……まあ、そうかもな。
お前のところに転がり込む前は、ちゃんと食べれる日の方が少なかったしな。
今では1日2食か3食。いいものを食べさせてもらえるようになった。
食事というものがこんなにも幸せだったこと。物心着いてから初めて知ったんだよ。
本当に、お前はなんでもくれるよな。
いろんな経験や、感動。幸せに……愛だって。
今だって、こうやってメニューを眺めながら、とてもワクワクしているんだぞ?
それをお前と共有できていることを、私はとても幸せに思っているんだ。
ありがとな。
えと……なんの話をしてたんだっけ。
(主「お肉の部位の話」)
あ、そうだったな。それで、お前はどこがオススメなんだ?
(主「ヒレ肉は脂身が少なくて比較的ヘルシーかも」)
この中だったらヒレステーキなのか……でもこれ、他のと比べて少し高くないか?
(主「気にしなくていいって」)
ん……お前が勧めてくれてるんだ。私はこれにするよ。
お前は?
(主「僕は赤身にしようかな」)
赤身……ざっくりした名前だが、それってどのあたりの肉なんだ?
(主「赤身はモモ肉のことだよ」)
モモ肉……ふふ。そういうことか。
(主「そういうって?」)
お前、太もも好きだもんな。
さっきだって入念にマッサージしてくれたし、時々内腿にキス、してくれるよな。
あれ……耽美な雰囲気で、結構好き……v
(主「別にそういうことじゃないけど」)
んふふ。わかっている。冗談だよ。
な。一口分けてくれよ。私のも分けてやるから。
あまりステーキって食べたことないから、いろんな種類、食べてみたいんだ。
それに、お前と同じものを味わうのは、幸せだから、な。
[注文した料理を食べてる二人]
(お肉を食べてる少女)
むぐむぐ……んむ……んきゅ。
んふふ。美味しいな。お前のオススメ、なかなかに気に入ったぞ。
あまり脂こくなくて、でも柔らかくて……ん。好きな感じ……
な。お前のも一口くれるんだろ?ほら、早くくれ。
んぁー(口を開けて待ってる少女)
…………
んむぅ……(主人公がじっと見つめてくるので口を閉じる少女)
なんだよ……お前、人の口の中をじっと見るなよ。恥ずかしいぞ……
(主「歯が小さくてかわいいなって」)
む……歯が小さいのは、いつも舐めてるお前が1番知ってるだろ……
そうやって何でもかんでも可愛いって……こんなところで私をどうしたいんだよ、全く。
お前、さっき中途半端にしてしまったのを根に持ってるのか?
ふふ。本当に、お前も可愛いよ。馬鹿者め。
(観念してカットしたステーキを少女に差し出す主人公)
あ……んぁ…………ぁむ。
んむんむ……ん……んふふ……おいひい……むぐ…………んきゅ。
こっちは少しトロッとしてるな。お前とのキスみたいだ。
まったり、もっちり……優しい気持ちになれる……どきどきする……
……いや、これはお前とのキスの味の感想だな。
お前といろんなことをしたり、されたりしてきたが、私は……な?
……お前とのキスが、1番好きなんだ。
暖かくて……愛されてるって、わかるから。
って、私は一体なんの話をしているんだ……
ほ、ほら。さっさと食べないと冷めてしまうぞ。
せっかくのお肉、美味しいうちに戴こうじゃないか。