第2話:戦場はゲームセンター
[先ほど言っていたゲームセンターへ]
(見知らぬ女の子と話していた少女)
うむ、じゃあまたな。
ん?どうした?
ああ、今の女の子か?なぁに、この店で知り合った友人だよ。
ゲームをしてたら向こうから話しかけてきてくれたんだ。
それから時々こうやって、会うたびにちょっとした話などをしている。
「私が人と話してるのが珍しかった」?
そうか……それもこれも、全部お前のおかげなんだがな。
……それにしては少し不機嫌そうな顔をしてるように見えるが……
ふふ……そうか。
お前、ヤキモチを妬いてるんだな?
愛い奴め……
安心しろ……私は同性に欲情したりする、所謂百合っ子などではない。
たしかにかわいい物は好きだが……
それよりも、なによりも……お前のことを愛しているからな。
ほら……ん、ちゅ、ちゅる、りゅ……んぷ…………ぷはっ……(少し強引にキスをする少女)
……ふぅ。
これが証明だ。
私の隣にはもうお前以外の居場所はない。
お前以外の人間を……好きなったりできるものか……
わかったか?ならば良い。
な、お前。良かったら一緒にこれで遊ばないか?
これか?これは音ゲーだよ。
流れる曲のリズムに合わせて演奏するんだ。結構楽しいぞ?
(主「なんだか難しそうな気がする」)
いやいや、難しくなんかないさ。
確かに難易度が高い曲はとてつもなく難しいんだが……
でも、初めての人でも出来る曲だってあるし、試しにやってみよう?
いや、な?私も昔はよくゲーセン通いをしてて、これでよく遊んでたんだよ。
で、最近になって久々に触ってみたらやっぱり楽しいんだけど……
せっかくふたりプレイできるデザインになってるんだから、ぜひお前と一緒にしたいなぁと思って。
嫌……か?
(そんなに言うならやってみようかな)
ふふふ……いいぞ。お前のそういうノリのいいところ、好きだ。
じゃあ少しだけ説明しておこう。
演奏って言ってもそんなに難しいことをするわけじゃないんだ。
まずそのギター型のコントローラーを肩にかけて……そうそう。
で、左手の所にボタンがあるだろう?
画面のこのラインに色がついた棒みたいなの……ノーツっていうんだが、
それが重なった時に、その色のボタンを押したまま、右手のこれ、ピックをぺーんと弾くんだ。
ボタンを押すだけのゲームと違って少し面倒な手順だから、なれるのは難しいかもしれないが……
まあ、とにかくやってみよう!
私が一緒にやるから、失敗しても大丈夫だ。
よーし、じゃあ100円を2枚入れて……
さあ、始めようか!
[ゲームプレイ後]
お前、なかなかセンスがあるな……本当に初めてか?
(主「学生時代には別の音ゲーやってたから」)
なるほど、他機種の経験者だったのか……
ふふふ、まさかお前も音ゲーマーだったとはな。少し驚いた。
でも、面白かっただろう?
(頷く主人公)
そうかそうか。そう言ってもらえると、嬉しいぞ。
うーん、どうしようかな……
(主「どうかした?」)
いや、ちょっと見栄を張って難しい曲を選んでしまったばっかりに、少し左手が痛いんだ……
(少女の手を取り指の甲にキスをする主人公)
あ……こら……指にキスなんて……
そんなことをしても治らないし……第一ゲームの筐体を触った後なんだから、汚い……
全くお前は……ん……んふぅ……っ…………
あ……でも、少し良くなってきたかも……しれない……
ほら、もういいから……
(主人公の額を押し返す)
………………(恥ずかしそうに)
その……ありがと。
じゃあもう一度……と思ったが、あそこに座ってる人、待ってるな……
むむ……こんなやりとりで待たせてしまって申し訳ないな……
なあお前。私、この横にあるドラムのゲームもしたいんだが、いいか?
うむ、じゃあお前はここで待っていてくれ。
あ、あと私のかばんも……あれ、いつの間にお前が持ってたんだ?
(主「さっきゲームが終わった時にね」)
ふふ……気が利くな。さすがだ。
[ゲームプレイ後]
(少し息切れ気味に)
ふゆぅ……さすがにツーバス譜面は疲れる……
すまん、待たせたな。
あ、タオル……
にへ……すまんな。
「意外と上手でびっくりした」?
ふふ……これも学生時代に……な。
言っておくが、私は体を動かすことが苦手なわけじゃないんだぞ?
ただ家でのんびりしている事の方が好きなだけなんだ。
ちゃんとした居場所があるから……お前が居てくれて安心できているから、なんだと思う。
あ、飲み物……わざわざ買ってきてくれたのか?
助かる……ありがたくいただくよ。
…………(ペットボトルのフタを開ける)
んく……んく……んく…………
ふぅ………………
(/少し息切れ気味に)
ん、ありがとう。火照った体に染み入るようだ。
お前のジュースは特効薬だな。体力が回復したぞ。
(主「なんかいやらしい言い方だね……///」)
「言い回しがいやらしい」?………………っ~~!(気付いて慌てる)
いや、別に今のは、そういう意味で言ったわけじゃ!
……っ……なくて、だな…………
………………(不機嫌そうに)
全く、お前は急になんてことを言うんだ……馬鹿者……
そういうことはあんまり公共の場で言うものじゃないだろう……
(主「どうせ聞こえないよ」)
まあ確かに……ゲーセンはうるさいからな。
よほど近くに居ないかぎり聞こえないだろうが……
ぐぬぬ…………
はあ……お前にはかなわんな……
……なぁ、次はあっちのコーナーに行きたいんだが、いいか?
[子供用ゲームコーナーへ]
(アイカツやプリパラ系のゲームで遊ぶ少女)
ううぅ……またプリティーうさちゃんゴスロリスカート……
レアなのが被った時のなんとも切ない感じ、嫌いじゃないけど、早くシューズをくれよ……
(主「キラカードだけど嬉しくないの?」)
ん?ああ、これか。
このゲーム、着せ替えするためのカードがランダムで排出されるんだが、1つの服がトップス・ボトムス・シューズに分かれていてな……
一番レアなコーデのパーツが出たのはいいんだが、持っているものと被ってしまって、嬉しいんだか悲しいんだか……
これの靴が出たら全身揃うんだが、最後の一つがなかなか出ないんだよ。
これが物欲センサーというやつなのか……
こうなったらシングルで買うか?いやしかし、それはプライドが……ううむ…………(独り言っぽく)
……あ、すまない。少し考えこんでしまっていたようだ。
まあランダム性が絡むシステムの時点で、こういうことは十分ありうることだしな……しかたないか。
(主「しかしまた随分と子供向けなゲームをしてるね」)
ふふ……そういうとは思っていたさ。
だが、子供向けのゲームだと言って侮ってはいけない。
これには音ゲー要素あり、ガチャガチャ要素あり、マイキャラカスタマイズ要素ありと、ゲームとして楽しめる要素がいくつも含まれているんだ。
一つ一つの難易度や奥深さといったものは専門的なゲームにはかなわないんだが、それが逆に子供向けゲームとしてのフレーバーと噛み合っていて、なかなかに良いデザインだと思うんだよ。
それに、このゲームを原作としたアニメとの連動要素も見逃せない……
いち視聴者として、プレイヤーとして、いつも期待と喜びを与えて貰っている。
だから私はコンテンツを愛する身として、ゲームをプレイするという形で応援しているんだよ。
ふふ、少し語ってしまったな。
……お前、ずっと立っていて疲れてはないか?
あっちの方に座れるところがあるんだ。すこし休憩しようか。
[ゲーセン内の静かめの休憩所に]
ふぅ……疲れたぁ…………(休憩所のテーブルに突っ伏す)
たまに運動をすると疲労感がすごいな……
うにゅ……
(顔を起こす)
なぁ、お前……これからどうする?
もう帰るか?それともまだ遊びたい?
(主「君はどうしたい?」)
むぅ……質問を質問で返すのは良くないと思うぞ……
私……私は…………
まだちょっと遊び足りない……かも。
だって、お前と家の外で遊ぶことなんて、一緒に住みはじめてからは殆どなかったし……
またしばらくこういう機会はないのかなって思うと、このまま帰るのは勿体無い……と思うんだ。
だから……もう少しだけ、付き合ってくれると……嬉しい…………
(少女の頭をくしゃくしゃと撫でる主人公)
ぁう……やめろぉ……髪がぐしゃぐしゃになるじゃないか……もう……
「かわいかったからつい」って……
だったら……許すけど…………うぅ……
(再びテーブルに突っ伏す)
お前はいつもそうやって私のことを「かわいいかわいい」って言うけど、
私だってお前のことをかわいいって言いたい時もあるんだからな……
さっきだって、私がゲームをしている後ろでじっと待っててくれてたの……
とってもかわいかったんだぞ?
それに気付いて、ちょっと集中できなかったし……
………………(恥ずかしそうに)
……まあいい。それよりもさっきの話なんだが……
さっきのあれは、その……肯定ってことで、いいんだよな?
すまんな、またわがままを……
それじゃあ、どこに行こうか。
(主「どこか行きたい所ある?」)
「私の行きたい所」?
うーん、そういうお前はどうなんだ?
………………にひ。
さっきのお前のマネだよ。
質問に質問で返されると、なんと応えていいのかわからなくなるだろう?
ふふふv