イメージによる深化
私の声を……聞いてください。
あなたは……電車に揺られて……すっかり眠ってしまっていたようです。
あなたが眠ってから……どれくらいの時間が……たったでしょう……。
短い時間……ほんの数分……眠っていただけのような気もしますし……。
長い時間……長く……眠っていたような気もします……。
電車は今……どのあたりを走っているのか……。
あなたが降りる駅まで……あとどのくらいなのか……。
……降りる駅って……どこだっけ……?
そんなことを……考えていると……。
『コツッ』と……誰かの靴の音が……聞こえてきました。
あなたの靴とは違う……誰かの……靴の音……。
あなたの他にも誰か……この車両に乗っているようです……。
んふふ……。誰だと……思いますか?
……それは……私。
そう……私です……。
あなたと同じ車両に……私も……乗っています。
いつから……乗ってたのかな……。
あなたが眠っている間に……乗ってきたのか……。
それとも、最初からいたのに……気づかなかっただけ……なのかな?
なんだか少し……不思議な感じ。
あなたは……私のことが……少しだけ……気になるかもしれません。
車両の中に二人きり……だからかな?
そう……。今、この場所には……。
あなたと私……二人だけ……。
……耳を澄ますと……お互いの息の音が……聞こえてきそうな……。
あなたが私のことを……気になっているかもしれないように……。
私も……あなたのことが……気になっているかもしれません……。
そう……私は……あなたのことが……気になっているみたいです。
私はあなたに……もっと……近づきたい……。
お互いの体温が……感じられるぐらい……。
私はあなたと……一緒に話しがしたい……。
お互いの事を……もっと知りたい……。
そう……思っています……。
……思い切って……あなたに近づいてみようかな。
私は……あなたに近づいてみることにしました……。
こつ……こつ……。
私の靴の音が……あなたに近づいてくる。
こつ……こつ……。
私の体温が……あなたに近づく。
こつ……。
あなたのすぐそばで……靴の音が……止まりました。
私が……あなたの……すぐそばに……。
ふんわりと……少し甘い匂いが……あなたの鼻をくすぐります。
花のような……果物のような……お菓子のような……。
心地よい香り……。
『こんばんは、また会ったね』
「キミのとなり……座らせてね」
「んふふ……お邪魔します……」
私はそう言って……あなたの隣に……座りました。
……座席が少し……沈む感触が……あなたのお尻にも伝わります……。
少し……ドキッとするかも……しれません。
「ねえ……私のこと覚えてる? 良くこの電車で一緒になるから、私はキミのこと、覚えてるんだけど……」
あなたと私は……隣り合って座りながら……話始めます。
あなたは……とても自然に……私と話すことができます。
まるで……昔仲が良かった友だちと……偶然再開したかのように……自然と会話することができます……。
「いつもキミ、もっと前の駅で降りるよね。今日は、降りずにずっと乗ってるみたいだったから……」
「だから、気になって声……かけちゃったんだ」
「いきなり声かけて、びっくり……させちゃったかな」
「電車に乗ってる時って、なんだか眠くなっちゃうよね」
そんな、たわいない会話を……。
私とあなたは……続けていきます……。
……私は……あなたと話をしていると……とても楽しくて……嬉しい気持ちになります。
……あなたと二人きりの……幸せな……時間。
……あなたと話していると……なんだかとても安心して……。
私……だんだん眠く……。
「ふあぁ……なんだか……眠くなってきちゃった……」
「……ごめんね、私……寝ちゃうかも……」
私はそう言うと……小さくあくびをして……目を……すーっと閉じてしまいました。
本当に……眠くてたまらないような……そんな様子です……。
「ん……う……」
私はあなたの横で、もぞもぞと動いた後……もう一度あくびをして……。
「すぅ……すぅ……」
静かな呼吸を……始めました。
「すぅ……すぅ……ん……」
眠そうな……ゆったりとした……私の呼吸……。
「すぅ……すぅ……」
私のゆっくりとした呼吸の音が……あなたのすぐ横から……聞こえてきます。
「すぅ……すぅ……」
うとうと……うとうと……眠そうな私……。
「すぅ……すぅ……」
聞こえてくるのは……電車の走る音……それから……私の呼吸の音だけ……。
「んぅ……むにゃ……」
カタンコトン……。電車が揺れて……。
電車が揺れると……私の身体も……ゆらゆら、ゆらゆら。
電車の揺れに合わせて……私の身体が右に……左に……小さく揺れて……。
あ……私の肩……あなたの肩に……当たってしまいそうです……。
カタンコトン……ゆらゆら……。
今少し……肩、当たっちゃった……かな?
「すぅ……すぅ……」
カタンコトン……ゆらゆら……。
あっ……今度ははっきりと……あなたと私の肩がぶつかりました……。
肩が触れると……私の身体がピクンっ、と……すこしだけ固くなるけど……。
ほら……またすぐにゆらゆら……。
「すぅ……すぅ……むにゃ……」
つん……つん……と……微かに……肩が触れ合う……。
「んぅ……ん……」
ピクン、ピクンと……身体が反応します……。
ゆらゆら……身体が揺れて……。
肩が……ぶつかる……。
つん……つん……。
「んう……んー……」
私の頭も……揺れて……ふらふら、ふらふら……。
倒れないように……頑張って頭を持ち上げても……。
「むにゃ……むにゃ……」
ふらふら……ふらふら……。
ゆれる……ゆれる……。
今にも……あなたの肩に寄りかかって……しまいそうです……。
ゆらゆら……ゆらゆら……。
すごく……眠たそう。
「んぅ……すぅ……すぅ……」
ふらふら……ゆれる……眠たそう。
あなたの肩に……私の頭が近づいていく……。
……もう、寄りかかっちゃっても……いいよね?
……3つ、数え下ろすと……私はあなたに寄りかかって……深い眠りにつきます。
3……。
身体が揺れる……。
2……。
頭が揺れる……。
1……。
ゆらゆら揺れる……。
0……。
よりかかる……。
深い眠りに……落ちていく……。
私は……あなたの肩に寄りかかるようにして……眠ってしまいました。
あなたの肩に……私の体温と……重さを……感じます。
「すぅ……すぅ……」
私の寝息にあわせて……身体が上下に……小さく動く……。
「すぅ……すぅ……」