Track 2

猫又さんの耳かき

にゃあ・・・んぅ、どうしたの? 耳の奥がムズムズする? いやね、いつの間にノミもらってきたの。よらないでっ。 にゃふ、冗談。 くすぐられた上にあったまって耳かゆくなってきちゃったのね。 大丈夫よ、きちんと責任は取るから。 にゃあ・・・んー・・・んぐぐ・・・もうちょっと・・・。 こたつから出たくないのよ。 だからこうやって手を伸ばして・・・ぐぬぬ・・・にゃ、にゃぅう・・・。 うん、そう。棚の上の箱。 ありがとう。 この箱に・・・あったわ、耳かきの道具。 お母さまがこの前まとめて片づけていたのよ。 耳かきしてあげる。 まあ、経験はないけど見てたから・・・やり方くらいは知ってるわ。 そのまま動かないで、こたつに入ったままでやりたいから。 とりあえず耳の中覗かせて。 頭傾けて・・・。 猫は暗いとこでも目がきくのよ。 ん・・・ふんふん、結構汚れているわね・・・。 これはわたしがいたずらしなくてもかゆくなってたんじゃないの? ふーっ・・・なにって、耳通りがどんなものか確認しただけよ。 にゃふふ・・・そんなに焦らなくてもいいじゃない。 今もし耳かきをつっこんだ状態だったら大変だったわよ。 耳かき棒・・・これ、あまり奥に入れすぎたら危ないのよね。 えーっと、おばあさまは入り口からしていたから・・・こうかしら・・・? あ、取れた取れた。 へえ・・・力を入れちゃいけないのにちゃんと取れるのかって思ってたけど・・・ 撫でるだけでもいけるものなのね。 そうだ、ちり紙用意しなきゃいけなかったわ。 取れたものはこれに乗せていけばいいのよね。 ん、ふぅん・・・ん・・・まだ取れる。 どうかしら、上手くできてる? にゃふ・・・良かった。 ふ・・・んぅ・・・長年の観察の成果よ。 それにしてもこれ・・・えっと、梵天だったかしら・・・ この白いふわふわ、ついじゃれたくなっちゃう。 冗談よ、大丈夫。 わたし、無闇に動くものにじゃれるような子猫じゃないもの。 ・・・んぅ?そんなに怖かった? それはごめんなさい。 本当にふざけて言ってみただけだから、安心してほしいわ。 だから奥もさせてね・・・ん、っしょ・・・んぅ・・・。 ここに大きいのがあるのよ。 ふぅ、ん・・・強くはしないように・・・慎重に・・・ たくさん出てきた・・・。 汚れの溜まりやすい場所があるものなのね。 こんなに集中して何かをするのは久しぶりよ・・・にゃふ、楽しい。 興味本位で始めたけれど、あなたさえよければこれからもさせてくれるかしら。 他の人にしろ、は無し。 今のわたしは、あなたを飼い主と決めているもの。 ・・・まだご主人と呼ぶには頼りない気もするけどね。 あ・・・すごい大物。 んくぅ・・・んん、ふはぁ・・・もう少し・・・いいから黙ってなさい。 んぅ・・・ふぅ・・・んく、ん・・・・・・よし、取れたわ。 これでこっちの耳は完了かしら・・・。 仕上げ? ああ、そういえば・・・梵天で仕上げをするんだっけ。 わたしったら、おばあさまもやっていたのに忘れるなんて。 耳かき棒を反対にして・・・。 ん、っしょ・・・はふ・・・ふぅ・・・・・・。 これで中に残った細かいのをきれいにするのよね。 その為のものだったわ。 うん、これで本当にできあがり。 見た感じではきれいになったと思うけど、感覚も変わってるのかしら? へえ・・・すっきりした、ね・・・ふーっ。 にゃあ?本当に風通しがよくなったのか試してみただけよ。 さっきより過剰に反応したわね。よしよし。 じゃあ反対もしなきゃ。 いいわよ、わたしが動くから。 はぅ・・・こたつから出るとさぶ・・・。 人の姿になると特に足とか指先とか冷えるのよ。 毛皮がなくなるからだと思うのだけど。 まあ、それなら猫のままでいろってのも一理あるけど・・・ せっかくできるようになったんだもの、この姿でしかできないことがしたいの。 いいから、耳の中見せて。 うーん・・・こっちも結構な汚れ具合ね。 そういえば、あなたが耳掃除してるところを最近あまり見ないわね。 昔はお母さまやおばあさまにしてもらっていたと思うんだけど・・・ 最近はそういうのしないの? まあ、気にしなくていいわよ。 これからはわたしがしてあげるんだから。 耳かき、入れていくわ。 んぅ、んん・・・ふぅ・・んぅ?暗いけどちゃんと見えているわよ。 しっかり出来ているでしょう、ほらこことか・・・ ちょうどむず痒かった場所ね。 秘部・・・いえ、恥部かしら・・・汚れていて恥ずかしい場所。 汚れが付いているのだってちゃんと見えているもの。 んぅ・・・大きいの取れた。 それにしても・・・こんな道具をわざわざ作ってしまうなんて 人間って本当、耳かきって行為が好きなのね。 にゃぅ?違うの? あなただって今・・・ん、ふ・・・気持ちよさそうに目をとじて。 まるで猫みたい。 母猫に舐められて喜んでいる子猫みたいだわ。 ん、んぅ?また奥に・・・。 そうよ、この暗くなったところに・・・ん、ふぅ・・・くっついてるのが見えるの。 もうちょっと・・・ふ、ぅう・・・取れた。 じゃあ、梵天で・・・。 中に残ったのを丁寧に・・・んぅ、またその顔・・・。 梵天ってそんなに気持ちがいいのかしら? なんだかだらしない表情をしているわよ。 ねえ、ふと思ったのだけど・・・わたしのシッポだってふわふわ具合なら負けてないでしょう? それなのに、梵天は気持ちよくてシッポはくずぐったいだけなんて・・・にゃぅう・・・納得いかないわ。 そうね、嫉妬してるのよ。 はい、できたわ。 ・・・ううん、できてない。 ふーぅ、ふーっ・・・だめ、やめてあげないの。 かぷっ・・・んぅ・・・ふぅーっ・・・。 知らなかったの? 猫は淡泊に見えて意外と嫉妬深い生き物なのよ。