Track 2

02

不倫へのためらいが全部なくなったわけではなかったけど、それよりも彼への性欲が上回った。 夫とは違う男性的な体付き。 筋肉質で引き締まった、素敵な肉体。 その指は太く、硬い。 でも唇は柔らかい。 始めは恐る恐るしていたキスも、次第に大胆になった……彼も、もちろん私からも。 舌が差し込まれることに嫌悪感しかなかったディープキスも、彼の舌なら喜んで受け入れられる。 少しタバコの匂いがするキス。 割って入ってきた舌に、私も自分の舌を絡ませてみる。 ねっとりとしているのに不快感はなく、むしろ心地いい。 まるで上等なお肉のように、甘くて美味しい。 もしかしたら食べられるんじゃないだろうか……ふと、そんなことを思って、唇で舌を甘噛みしてみる。 フニュフニュとした感触が官能的で、そのまましばらく噛み続けた。 肉厚でエロティックな舌を堪能していると、彼の手が乳房に触れた。 夫とは違う、大きな掌。 太くて硬い指が、私のたるんだ乳房を揉む……その力加減は絶妙で、痛みなんてまったくない。 でも、圧迫感はある。 強く押され、掴まれ、そして揉まれる。 掌で乳首を転がされるこそばゆさに、思わず呻いてしまう。 彼の舌を放してしまったけど、またすぐに吸い付いて、啜った。 彼も乳房への愛撫をやめなかった。 Eカップある乳房も彼の手の中にはすっぽりと収まってしまう。 優しく、けど強く揉まれる乳房から、じわじわと快楽が生まれているのがわかった。 乳首からの刺激が強くなっているのに気付いた時、それが硬くそそり立っていることにも気が付いた。 乳首がキュッと硬くすぼまって、痛みを覚えるほど。 その乳首を、彼が摘まむ。 ふんわりとしたこそばゆさの中から、ビリッとした刺激が生まれた。 私はもう、彼の舌を咥える余裕はなくなっていた。 その強い刺激に、息を荒らげてしまう。 緊張と快感、甘い刺激で、息苦しい。 そんな私の舌を、彼が吸った。 舌を絡められ、唇で甘噛みされる。 モグモグと咥え込まれていく感触は、食べられている、という被虐的な官能となって、頭と、心を熱くしていった。 まるで溺れているかのようにあっぷあっぷと息をしながら、それでも彼のキスからは逃げ出さない。 むしろ抱きつく腕に力を込めて、より強く吸って欲しいと唇を押し付ける。 流れ込んできた唾液を飲む……唇の端からこぼれた唾液が頬を伝い、首筋をくすぐる。 こんなに淫らなキスをしたことがない。 私は、乱れることの興奮を覚えていた。 はしたなく、ふしだらに、 そして、汚れていくことへの官能に溺れる。 夫以外の男性に抱かれるという淫乱さに、強い性欲をわき上がらせる。 もちろん、相手が彼だからこそ、安心して乱れられるのだろう……。 乳首を転がされ、摘ままれ、引っ張られる。 甘い刺激が全身を駆け巡り、私の全部を敏感にしていく。 唇や舌も感覚が研ぎ澄まされていて、少しの動きでも快感が生み出されている。 そんな彼の唇が、ふっと離れた。 そして、乳首へと向かう。 片方の乳房を揉みながら、片方の乳首へと吸い付いた。 敏感になっていた乳首から、更に強烈な刺激が生み出される。 オッパイを吸う。 ……そういえば夫も、キスよりも乳首へ吸い付く時間の方が長かった。 夫に対しては何も思わなかったけど、彼に吸い付かれるのは嬉しい。 まるで、赤子を抱いているような気分になる。 もっとも、赤子はこんな淫らに吸い付いたりはしないだろう。 舌をそうしたように、乳首にも甘噛みしてくる。 勃起した乳首は噛みやすいのだろう。 唇で、そして歯で、そそり立った乳首を咥える彼。 指での愛撫とはまた違う快感に、私はあられもなく喘ぎだした。 いや、喘ぎ、というのがどういう声なのか、私は知らない。 ただ、気持ち良さと嬉しさに喜びの吐息を漏らしただけ。 でも、自分の声を聞いて、なんて淫らな声なんだろうと思った。 自分で自分の声に驚き、羞恥を覚え、そしてもっと聞きたいと思ってしまう……もっと喘ぎたいと思ってしまった。 性の悦びに喘ぐ自分が自分ではないような……自分を客観的に見ているような感覚。 官能に悦び喘いでいるのは自分であり、自分ではない。 いや、もしかしたらこれが本当の私なのかもしれない。 もうずっと彼だけを愛していて、いつでも彼とのセックスに飢えている。 だから、こんなにも淫らになれる……オッパイをしゃぶられて、全身を快楽に痺れさせ、更なる快感を求める。 彼の愛撫をすべて受け入れ、唇を、乳首を舐められ、そして更に下へ、下へと向かう彼の唇を喜んで迎える。 陰毛を掻き分け、女性器へと辿り着いた彼に、私は淫らに囁いた……。 してください、と。 女性器にキスしてください。 オマンコを舐めてください。 クンニリングスで悦ばせてください、と。 彼は唇と手で小陰唇を掻き分け、クリトリスに舌を伸ばした。 乳首とは比べものにならないほど、強い刺激が背筋を駆け上る。 これまで感じたことのない、強烈な性的快感。 それはそうだろう。 夫はクンニしてくれたことはないし、してもらいたいと思ったこともない。 でも、彼にはしてもらいたいと思えた。 唇だけではなく、乳首だけではなく、女性器にもキスしてもらいたいと思った。 私の淫らな考えが通じたのか、彼はためらうことなく舐めてくれる。 女性器にキスされる。 こんなにも背徳的な官能が他にあるだろうか。 愛する男性に、自分の淫らな部分を見せ、匂いを嗅がせ、さらに味わわせる。 しかも今日はまだ入浴していないのに。 汚れた私の、一番汚れている部分を舐めてもらう。 マゾヒスティックでありサディスティックでもある感覚に、私は更に強い喘ぎを漏らしていた。 彼も息を荒げつつ、休むことなく女性器を舐め回してくれる。 女性器というのは意外と鈍感なもので、どこをどう舐められているのか、細かく感じ取ることはできない。 ただ、クリトリスは刺激が強いからわかる。 舌の動きと熱さで、ビリビリと痺れさせられる。 舌だけではなく、鼻先で擦ったりもしているのだろうか。 膣口の方を舐められていても、クリトリスが痺れたりする。 もしくは、指で陰唇をいじっているのだろうか。 挿入感はないから、指を膣に入れてはいないようだった。 もちろん、入れてもらうのは構わない。 彼のモノなら、舌でも指でも、もちろんペニスでも入ってもらいたい。 挿入してもらいたい。 でもこの時は、クンニされる喜びに身も心も痺れさせていた。 愛する男性に性器を愛撫されるという幸福感。 セックスは嬉しいことなのだと体が理解して、たくさんの愛液を溢れさせる。 股間に当たる彼の顔がヌルヌルして、性器だけではなく内ももやお尻の方まで舐められたり、顔で擦られたり。 彼はクンニに慣れているのか、また乳房に手を伸ばしつつ、舐め続けた。 クリトリスを舐められ、乳首を摘ままれて、私は喜びの声をあげ続ける。 息を荒げすぎたのか過呼吸のような症状が出始め、意識がもうろうとしてしまう……それなのに、気持ち良さは続いていく。 快感の痺れが全身を駆け巡り、ビクンビクンと体を跳ねさせた。 その衝撃がまた気持ち良くて、もっと痺れさせて欲しくて、淫らな言葉を口走ってしまう。 けれど、何を言ったのか、細かくは覚えていない。 恥ずかしすぎて覚えていたくなかったのかもしれない。 そんな淫らな快楽の時がしばらく続き、ふと我に返った時、彼の顔が目の前にあった。 いつの間にか、クンニリングスが終わっていた。 どうやら私は失神していたらしい。 ごく短い間だったけど、快感で気を失うなんて初めてだし……それは、とてももったいないことだと思えた。 けれど同時に、幸せでもある。 この幸せを彼にも感じて欲しい……私は、大きくそそり立ったままの彼のペニスに目を向けた。 彼がクンニしてくれたのだから、私もフェラチオをしてあげたい。 彼もその意図を察してくれた。 勃起したペニスに顔を寄せる。 触れてみると、何故かヌルヌルしていた。 私が失神している間に挿入したのだろうか? 思い切って尋ねてみると、我慢汁が出ているんだよ、と教えてくれた。 我慢汁というのが何なのかはわからなかったけど、我慢していることだけはわかった。 きっと、早く射精したいのだろう。 フェラチオするよりも、セックスした方がいいのかもしれない。 けど彼は、フェラチオを望んだ。 私は喜んで頷きつつ……やり方を、彼に尋ねた。 私は以前、夫のペニスを見ただけで気分を悪くしてしまったので、実際にフェラチオをしたことはなかった。