Track 2

尋萌~ビンタ

さて。 キミは見たところ、日本人のようだが、まずは名前を聞かせてもらおうか。 名前は? (ビンタする音:ビシ!) 答えなければ、こうやってキミの頬を打たせてもらう。 どうだい? 名前ぐらいは教えてくれてもいいだろう? (ビンタする音:ビシ!) ふふふ。 (ビンタする音:ビシ!) 名前は? (ビンタする音:ビシ!) 名前は? (ビンタする音:ビシ!) Ihr Name? (イア・ネイム?:名前は?) (ビンタする音:ビシ!) Ihr Name? (イア・ネイム?) (ビンタする音:ビシ!) Ihr Name? (イア・ネイム?) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (やや間) 所属は? (ビンタする音:ビシ!) 飼い主は? (ビンタする音:ビシ!) 何とか言ったらどうだ? (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) 言葉ぐらいは喋れるだろう? (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) ふふん。 なかなか強情なヤツだな。 まぁ、その方が可愛がり甲斐があるというものだ。 キミみたいな口が堅い男は、私のタイプだ。 キミの持ち物を調べさせてもらった。 プライバシーの侵害などと言わないでくれよ。 これも、私の仕事なのでな。 で、このパスポート。 これによると、キミは日本人で、名前は・・・。 『田中 太郎』。 くくっ。 よくある名前じゃないか。 『田中 太郎』・・・。 もうちょっと捻った名前を付けようと思わなかったのか? よほどの面倒くさがりか、それともバカなのか。 (ビンタする音:ビシ!) (囁き声で) お前は、どちらだ? ミスター田中。 ・・・くっ! (ビンタする音:ビシ!) 本当に強情だな、キミは。 私が呼ばれる訳だ。 (ビンタする音:ビシ!) 私はね、お前のような男をいたぶるのが大好きでね。 ここからは、お前が喋ろうが関係ない。 徹底的に可愛がってやるからな。 (ビンタする音:ビシ!) 嬉しいだろ? (ビンタする音:ビシ!) どうだい、スパイ君? (ビンタする音:ビシ!) 嬉しいんだろ? (ビンタする音:ビシ!) そうだろう? (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) おやおや。 キミの頬、真っ赤になっているぞ。 これはさぞかし痛いだろうな。 ん? どうだ? (ビンタする音:ビシ!) おいおい、返事ぐらいはできるだろう? イエスかノーか。 (ビンタする音:ビシ!) 私の日本語が分からないのか? では、ドイツ語ならどうだ? (ビンタする音:ビシ!) Ja oder nein?(ヤー オーダ ナイン?・イエスかノーか?) (ビンタする音:ビシ!) Ja oder nein?(ヤー オーダ ナイン?) (ビンタする音:ビシ!) Ja oder nein?(ヤー オーダ ナイン?) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) ・・・やれやれ。 こんなに口が堅いヤツは初めてだよ。 ふふ、褒めてやるよ。 だが・・・。 (ビンタする音:ビシ!) (囁き声) 私は、キミのような男が大っ嫌いでね。 (ビンタする音:ビシ!) (囁き声) 虫唾が走るんだよ。 (ビンタする音:ビシ!) (囁き声) さっさと喋ってくれないか? (ビンタする音:ビシ!) (囁き声) どうだね? (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) ふうむ。 困ったものだね、キミは。 こう見えて、私も結構忙しくてね。 今夜はオペラを観に行くことになっているので、あまり時間が無いのだよ。 手こずらせないでくれないか? (ビンタする音:ビシ!) 今夜のオペラは、ヴェルディのリゴレットだ。 知っているかね? (ビンタする音:ビシ!) 私は数あるオペラの中でも、この作品が一番好きでね。 あの美しく、刹那の悲劇。 (ビンタする音:ビシ!) どう思うかね、スパイ君? (ビンタする音:ビシ!) あの作品は陰惨で嫌いだと言う人もいるが、人生とはハッピーなこともよりも、 むしろ苦難の方が多いと思うが、どうだね? 私は現実主義なのでね。 ハッピーエンドな物語は、馬鹿馬鹿しさを感じて失笑してしまうのだよ。 くく。 そう。 人生とは痛みなのだよ。 (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) (ビンタする音:ビシ!) 痛みこそ、人生。 (ビンタする音:ビシ!) そう思うだろう? (ビンタする音:ビシ!) (囁き声) はぁ・・・。 スパイ君は、今、人生そのものを感じている訳だな。 ふふふ。 (ビンタする音:ビシ!) さて。 どうもキミは無口なようだな。 しかし、コミニケーションとはお互いの会話で成り立つものだ。 このまま、私のお喋りだけというのは味気ないのでな。 ちょっと方法を変えて、キミとコミニケーションを 取ろうと思うんだが・・・。 どうだね? まぁ、イヤだと言われても、やらせてもらうんだがね。 (部下に向かって) おい、こいつの服を剥ぎ取って立たせろ。