エピローグ『私は幸せです』
それから一夜明けて、翌日のこと。
少し、体は痛かったですけれど。体調は何も問題なく、何だか不自然なくらいに、気分もよくて。
いつもと同じように、本屋の店番を始めました。
いらっしゃい……
……ああ。この前の商人の方ですか。
またお仕事の話ですか。ご主人は奥にいます。勝手にあがって、さっさと帰ってください。
……なんですか。私の顔を、じっと見て。
……嬉しそう? 私が?
おかしなことを言わないでください。
まったく……。
……ああ、そうそう。この前の、質問ですが。
あなたは、私とご主人の関係が何かと聞きました。
お答えします。
――私とご主人は、大切な人同士です。
……私はダークエルフで、ご主人は人間です。
だけど……お互い大切に想うことに、理由なんて要らないでしょう?
それだけです。
……。何を笑っているのですか。不愉快な。
さあ、さっさと用事を済ませて帰ってください。私も、忙しいのです。
……他にお客はいませんけれど。
そんな風にして――
街をさまよっていたダークエルフが、何故か今は、本屋の店番をしています。
一体、どうしてこうなってしまったのでしょう。
けれども。家があって。仕事があって。……ご主人がいて。
今、とても幸せです。
私はもう、しっかりと分かっています。
幸せであることに――理由なんて、要らないのです!