第3話 相対的温度
[深夜ラーメンの後主人公のコートのポケットの中で繋いで歩くふたり]
しかし、こんな時間にやってるラーメン屋があるとはな。
24時間年中無休……私とは真逆の存在だな。ふふふ。
でも、美味しかったぞ。
年越し中華そばだな……年明けてから食べてしまったが。
こんな夜中にあんなカロリーの高そうなもの……あれは罪の味だよ……全く。
んふふ……それなら私たちは共犯者かな。
同じ罪を犯した咎人だよ。
ちょっと悪いことしてる気分だが、ワクワクするし、楽しいし……
子供の頃、夜遅くまで起きてるだけで妙なテンションになっただろう?
あれと同じような気持ちだ。
こんな生活リズムになって、長らく縁のなかった気持ち。
今になって思い出せるなんてな。
楽しいよ……新年早々浮かれた気分にさせてくれるな、お前は。
真夜中、寒空の下。
お前のコートのポケットに手を入れて、二人で温もって……
……な。お前。
そのコートの中、私も入れてくれないか?
こんな夜中だ。誰に見られるわけでもないだろう?
(主人公のコートの前にすっぽり収まる少女)
ん……ふふふ……暖かいな……お前の中は……
そのまま前は……流石に閉じないか。
全部お前に包まれたら、さぞ幸せだろうと思ったんだがな。
(主「眠たいの?」)
ん?いや、別に、深夜テンションなわけではないよ。
ただ、噛み締めているだけさ。
だが、こうしてると、お前のほうが冷えてしまうのかな。
そうだな……では、あそこの自販機で、暖かい飲み物でも頂くとしようか。
(近くにあった自販機の前で暖かいものを飲む二人)
んしょ……(缶飲料のプルタブを開ける少女)
ん……ちゅる……んっ……(缶のココアを飲む少女)
んふふ……こう寒いと、暖かい飲み物が身に染みるな……
お前の胸もあったかいし……幸せだ……
(君もあったかいよ)
私もか?そうかそうか。それは良かった。
ん……ちゅる……んく……んふふ……
この状態……さしずめ私はお前専用のカイロだな。
ホットドリンクで体を温めてるから、いつもよりも温度が高いだろ?
ちゅる……ん、ふぅ……
はぁ……(白い息を吐く少女)
ほら、こんなに息が白い。
自販機のあかりに照らされてるから、なおさらそう感じる。
このまま寒さで、時間が凍りついてしまえばいいのにな。
そしたら、私たちは永遠にふたりで、暖かな時間を過ごせる……
ふふ……だが、それだったら家で一緒に毛布にくるまってた方が暖かいかな……
な……それ。コーヒー、一口くれないか?
(缶コーヒーを差し出す主人公)
あ……そうじゃなくってだな……えっと……
(「なるほど」と、自分のコーヒーを口に含む主人公)
うん……そうだ。わかってるじゃないか……
(コーヒーを口移しされる少女)
んむ……ん……ん……んくっ……
んぅ……なんだかこれ、舌がピリピリするな……缶コーヒーってこんな感じなのか?
まあいいさ……このまま、お前の味で中和させてもらえるならな……ん……
(少女から主人公へキスをする)
ちゅ、ちゅ……んちゅ……ちゅぷ……れる……んぷ……
ぇる、れる……んちゅ……っぷ……ん……んちゅ……
んふふ……本当に暖かいな、この空間は。
お前のコートの中で、暖かい飲み物を飲んで、お前の体温を流し込まれて……
好きで好きで……たまらなくなってしまうよ……ん……んちゅ、ちゅむ……
ふふ……だがしかし、あまり屋外でこうやっていると、そのうち冷えてくるかもしれないな。
そろそろ戻ろうか。
名残惜しいが、別に今じゃなくては味わえないことでもないしな。
(主「コートの中に入ったまま行くの?」)
いや、ちゃんと出るよ。このままじゃ歩きにくいだろ?
……でも、もうちょっとだけ……いいよな?