Track 3

ふたりっきりの握手洗い

;/////// ;Track3 ふたりっきりの握手洗い ;//////// ;SE ドア開 ;9/前遠(マイクに背中向き)→"って"から(マイク向き) 「ただいま~ って、今日は休診日だから、診療所、誰もいないんですけど。 どぞどぞ、気にせずあがってください。っと――」 ;1/前(マイク向き) 「せっかくおててあらい教室したんだし。 アルコールスプレー教室とか、うがい教室とか、そういうのもやっちゃいましょうか。 もっとも――」 ;3/右 (接近ささやき)→“うふふ”で ;1/前 「ここから先は、あなただけが生徒さん、ってことになっちゃいますけど。 うふふっ!」 ;1/前 「っていうか、スプレーしましょう。アルコールスプレー。 100ml中83mlがエタノール、添加物として3.7%のイソプロパノールが含有され、あとは精製水っていう、 ばりばりの第三種医薬品、医療機関向けの消毒用アルコールですから、消毒効果はお墨付きですよ」 「あ、イソプロパノールっていうのも、アルコールの一種です。 これが3.7%以上添加されてると引用不可の扱いになるから、酒税――お酒にかかる税金が免除されて、 お安くて効果は十分な消毒液が作れるんだそうです」 ;3/右 (気持ち接近、囁き気味) 「だから――ふふっ、間違っても飲んじゃダメですよ?」 ;1/前 「って、冗談はともかくとして手指消毒ですね。 さっきの教室でお互いばっちり手洗いしましたけど、移動中、思わぬところでウィルスや菌、もらっちゃってるかもしれませんから」 ;1/前 →‘ん”以降密着距離 「手、ちょっと見せてください。 (呼吸音)(呼吸音)――うん、大丈夫。しっかり乾いてるし、肌荒れも傷もないっぽいですね。いいお手々です」 「あ、乾いてるかどうかは、アルコールスプレーの消毒効果にかかわってくるところなんですよ。 アルコールに期待できる防疫――感染症を予防する効果のうち、大きく期待できるところはふたつあります。 まずはアルコールそのもので破壊できるウイルスへの防疫。 で、もうひとつは、アルコールが揮発するときの脱水効果による防疫です」 「この、揮発するときの脱水効果は、手が濡れちゃってるとその分弱まっちゃうんです。 だからアルコール消毒の前は、手を乾燥させることがとっても大事。 あなたの手も、わたしの手も、いまはしっかり乾燥してますから―― スプレー、しますね? 手のひらくぼめて、水たまりつくれるようにしてください」 ;SE スプレー。長くシューってタイプ 「ん……(呼吸音)(呼吸音)」 ;$=SE スプレーもっかい 「で、わたしも、っと――$……(呼吸音)(呼吸音)――うん」 「うふふっ、たくさん出ますよね。でも、このチャプチャプが大事なんです。 いま、左手につくってもらったくぼみにアルコールのプールができてますから、 そこにこうやっって――右手の指先と指の間をひたすんです……(呼吸音)」 「――そう、指先と爪の間の消毒ですね。 そしたら今度はプールを反対の手につくるプールにお引越しさせて――よいしょ。 で、右手の指先と爪の間も消毒して――(呼吸音)――」 ;SE アルコールを手でこすりあわせて伸ばし広げる 「あとは、手と手をこすりあわせて、揮発しきらないうちにまんべんなく伸ばしていきます。 手のひら――(呼吸音)――手の甲――(呼吸音)――手の横がわ――(呼吸音)」 「指と指の間に――(呼吸音)(呼吸音)―― 両親指を――(呼吸音)――ひねり洗いして――(呼吸音)―― それから手首――(呼吸音)――で――(呼吸音)――。 はい、おしまいです」 「ただ、アルコール消毒では除去しきれない可能性の高い感染症の原因要素も、結構おおいんですよ。 インフルエンザウイルスとかにはすっごく効果あるんですけど、食中毒の原因になる、ノロウイルスとかはすっごくアルコール耐性高いんです」 「だから、なんだかんだいって、最強で万能な感染症対策って、実は手洗い。 せっけんと、たくさんの流水とであやしいの全部洗い流しちゃうことなんです。 うふふっ、ちょっとおもしろいですよね」 ;3/右 (顔を寄せて、ないしょばなし気味) 「ちっちゃいときからとっても身近な、ごくありふれた存在が。 実は最強に万能に、安全をまもってくれてる――なぁんて」 ;1/前 (つぶやき。独り言) 「すみちゃんがあなたのお水なら、わたしはせっけん……に、なれてたらいいんだけどなぁ」 ;1/前 「あっ!? ううん、なんでもないです。あの、お水とせっけんで―― あ! そう、せっかくだから、ほら、さっきちびっこたちがやってた『握手洗い』 あれもあなたに教えておいた方がいいかなぁ、なんて」 「だってほら! えみちゃん、娘さんとかが手洗い嫌がったりしたときに、役にたつこともあるかな~って思いますから――(呼吸音)(呼吸音)」 「じゃ、おしえますね、握手洗い。まずは洗面所にいきましょう」 ;SE 足音(スリッパ+リノリウム) パタパタ ;3/右 「って、いっても手洗いのポイントは全部同じなんです。さっきのおて手洗い教室と。 ただひとつだけ違うところは~」 ;SE 水栓ひねって水出す ;3/右 接近囁き →‘って”で戻る 「『わたしがするのとおんなじに』 って、ただ単に、それを相手に伝えてからおてて洗いするだけのことなんですよ。 だからまずは、こうしてお手々を水に濡らして――」 ;SE 水止める ;SE 手を水に濡らす→せっけん泡立てる。以降も声にあわせて手洗いSE 「――せっけんを泡立てるところから。はい、わたしとおんなじにすると~ ……(呼吸音)――ですです。おててとおててがくっつきますよね。 この状態で、あわあわあわ~って泡立てます」 「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 ;この辺から、握手洗い思ったよりヤバいと実感していきます ;(恋心あきらめて平気になった筈だったのに――というこころの動きです) 「泡立ったら、手のひらと手のひらをお互いあわせて……(呼吸音)(呼吸音) 指の腹まで――(呼吸音)(呼吸音)―― 丁寧に、丁寧に――(呼吸音)(呼吸音)―― こすり、あわせて――(呼吸音)(呼吸音)」 「そしたら今度は――手の甲を…… (呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)―― (生唾を飲む)――(呼吸音)(呼吸音)――」 「ぁ……っと、手、器にしますから―― あの……その……指先……」 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」 「そしたら、指と、指の間を――(呼吸音)(呼吸音) ――くっ――ふっ――(呼吸音)(呼吸音) あ、いえっ――単に――くすぐったい――だけ――(呼吸音)(呼吸音) ふあっ――ん……(呼吸音)(呼吸音)――あ、ちょっと! ちょっとだけ待って。 少し、あの――落ち着かせてください」 ;SE atop 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ――(ごくっ)」 「はぁ、はぁ、はぁ――あ……もう、大丈夫だと思います。 けど――なんか――ほんと、わたし、くすぐったくて。 やだな、あはは、年、ですかね。 敏感肌になっちゃったとか――あはははは」 「とにかく、あと親指と手首だけだから、きっちり終わらせちゃうましょう。 あ、けど――」 ;位置そのままで、うつむいてぼそぼそ 「気持ちそっと、やさしくで――お願いできたら……うれしい、です」 ;SE 手洗い音(継続) 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――っ」 「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 「~~っ……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」 ;SE stop 「(長い安堵+ちょっとさみしい吐息)」 ;SE 水栓ひねる→流水でる ;SE 流水で手を流す音で、F.O.