うがいのお時間
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;Track4 うがいのお時間
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「ふあ~~~っ! 握手あらい、思ったよりなんか緊張しちゃいました。
ヘンですよね、幼馴染のお隣通しで、スキンシップだって――ほら、こないだのマッサージとか耳かきとか、
ねぇ、あれの方が、握手洗いよりよっぽど密着だと思うんですけど」
「なんかわたし――あはは、思春期の女の子ってわけでもないのに、喉まで乾いちゃいました。
お水お水――って、危ない! 危ない! そうですよ、わたしたちまだ、うがい、してないじゃないですか!」
「お水のんで、胃に流し込んで胃酸でウイルスや菌を殺しちゃう! みたいな情報もネットでみたことありますけど――
酸に抵抗力をもってるウイルスも菌も全然珍しくないですからね、ノロウイルスとか、ピロリ菌とか。
寄生虫だとアニサキスとかもそうですよね」
「だから、飲むのはリスクが大きい。うがいして吐き出すのが防疫の観点からはずっと有効っていう考え方に、わたしは賛同してます。
水道水でのうがいをした人たちの群が、うがいをしなかった人たちの群や、ヨード液をつかったうがいをした人たちの群より36%も風邪の発生を低く抑えられた――っていう研究論文もありますし」
「うがいしなかった人たちはともかく、ヨード液……うがい薬を使ったひとたちにも有意な風邪の予防効果は見られなかった、ってちょっと意外ですよね。これは、『ヨード液が、口の中の常在菌も殺菌してしまうこと』が原因なんじゃないか、とも言われてます」
「ただ、その論文内でも、『ウイルスを洗い流すから有効とは考えにくい』とも明記されてるんです。
その上で、『ウイルス感染に必要な酵素を洗い流してるのかも』とか、『口内環境の改善につながってるのかも』とか、あるいは『水道水中の塩素が有効なのかも』とか推測されてます」
「だから、うがい――水道水でのうがいは、やって損っていうことは絶対にないんです。
せっかくですし、ね? 医療現場で効果が高いとされて推奨されてるうがいの仕方、教えますから、やっちゃいましょう」
;SE 水道水出す→コップを水でざっと流す→コップに水貯める
「まずはコップをお水で流して――ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――
そうしたら、コップにお水をためて――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うん」
;SE 水道水とめ
「一番最初。ってか、ここが最重要のポイントなんですけど――
うがい、いきなりガラガラやらないで、最初は口をゆすぐための、ぶくぶくうがいをするんです」
「こういう感じ。やってみますね?
ん……
「時間は15秒以上。ぶくぶくうがいで口の中にくっついてる菌やウイルスを洗って吐き出しちゃうのが目的です。
これをしてからじゃないと、喉の奥に逆に悪いものを運んじゃう……って危険性も増えちゃいますから」
「ぶくぶくうがいは2回、念の為くりかえしましょう。もう一回――ん……
(口の中でぶくぶくうがい、15秒)――っ――(しずかに水を吐き出す)」
「ぶくぶくうがいをしたら、次はガラガラうがいです。
これは、喉の奥を水道水でガラガラってして悪いもの掻き出して、体の外に出しちゃうっていうイメージでやりましょう」
「ガラガラうがいのとき、『あー』って声を出す感じでやる人もおおいんですけど、『おー』の方が、より喉の奥までうがいしやすいです。わたしの場合は。向き不向きでやりやすいやりづらいもあると思うから、興味あるようだったらためしてみてください。大事なのは、『水道水でぶくぶくうがいを15秒2回』のあとに、『水道水でガラガラうがいを15秒2~3回』、やるってことです」
「じゃ、いきますねー。わたしは『おー』っていいながらのガラガラうがいで、まずは、いっかいめ。
(『おー』って声だしながらガラガラうがい、15秒)――(しずかに水を吐き出す)」
「15秒、思ったより長い時間で、たいていは短くなっちゃうんです。
それでもやらないよりずうっといいですけど――もしちゃんとしたいなら、『うさぎとかめ』を、頭の中で歌ってみてください。
あれ、15秒くらいになりますから」
(♪以降 可能なら歌唱お願いいたします。詞・曲とも著作権切れ確認済み)
「ためしてみます? いきますよ~
♪『もしもしかめよ かめさんよ せかいのうちで おまえほど あゆみののろい ものはない どうしてそんなに のろいのか』」
「ね? うふふっ、普通にうたうと16秒とかゆっくりでも20秒とかになるんですけど、頭の中だとどうしても早くなっちゃうから、ちょおどいいんです」
「じゃ、もっかいガラガラうがいですね。いきますよー。頭の中で『うさぎとかめ』で。ん……
(ガラガラうがい15秒)→(静かに水吐)」
「ふうっ、わたしはあといっかいだけ、念押しでやっちゃいますから。ちょっとだけ待っててくださいね?
うふふっ、具体的には、あと15秒。
(ガラガラうがい15秒)→(静かに水吐)――っと」
;SE 水栓ひねる→水流す→とめる
「はい、おしまいです。
それで――あの、またせちゃってほんとーに気が引けるんですけど」
「いっつものルーチンなんで、鼻うがいと目薬と洗顔も、わたし、やっちゃいたいんです。
あんまかっこいいものじゃないから、待合室でテレビかなんかみながら待っててもらってもいいんですけど……」
;自嘲にいかず、やわらかに、ふわっとやさしく、かるく。積み重ねてきた時間を懐かしむ方向
「もういい年になっちゃった幼馴染ですからね、わたしたち。
いまさらカッコつけるような関係でもないですし」
;3/右 接近囁き
「興味あるなら教えちゃいますよ?
鼻うがいの仕方も、点眼薬の使い方も、フェイスウオッシュの方法も」
;環境音 F.O.